トリュフォー監督との出会いは神の摂理!『大人は判ってくれない』の名優ジャン=ピエール・レオ来日
「没後30年フランソワ・トリュフォー映画祭」が11日、都内・角川シネマ有楽町にて開幕を迎え、トリュフォー監督初の長編映画『大人は判ってくれない』ほか7作品に出演したフランスを代表する俳優ジャン=ピエール・レオが舞台あいさつに登壇。「神の摂理によってトリュフォー監督と出会うことができた」と、当時を振り返った。
本映画祭は、フランスの名匠トリュフォー没後30年を機に、短編デビュー作から遺作まで全23作品を特集上映する映画ファン垂涎の企画。『大人は判ってくれない』で長編映画デビュー以降、ジャン=リュック・ゴダール監督らとともにヌーヴェル・ヴァーグの旗手として数々の名作を生み出したトリュフォー監督のすべてがここに集結する。
『大人は判ってくれない』の本編終了後、超満員となった会場に万雷の拍手で迎えられたレオ。長旅と70歳という高齢から少々疲れを見せつつも、ファンを前に満面の笑みを浮かべながら、「わたしにとってこの作品はプロビデンス、神の摂理のようなもの。そのプロビデンスによって、トリュフォー監督に出会うことができた」と述懐。
そして、「この作品はアントワーヌ・ドワネルという一人の少年の物語……」と語りはじめ、話は佳境に入るのかと思いきや、「これ以上は何も言うことがありません」と肩すかし。「質問があったらどうぞ」とあくまでもマイペースのレオに、会場のファンから、「アントワーヌが涙を流すシーンの意味」について質問が飛んだ。
するとレオは、「素晴らしい映画の仕事をしている時、神の恩寵(おんちょう)のようなものがある」と切り出し、「実は、撮影が冬だったので風邪を引いてしまいました」と、話はまたしてもおかしな方向に。「だから、自然に涙が出てきたんです。これが神の恩寵。奇跡のようなことが起きる、それが映画なんです」と、真実かジョークかわからないまま、煙に巻かれてしまった。
さらに、「トリュフォー監督は30年前に亡くなったが、いまも生き続けているジャン=リュック・ゴダール監督の最近の映画をどう思うか」という質問に対してレオは、「答えは簡単です。生きているからといって、勝利者になれるわけではない」とニヤリ。その悪戯っぽい笑顔は、まるで13歳のアントワーヌ少年のような純粋さで満ちあふれていた。(取材:坂田正樹)
「没後30年フランソワ・トリュフォー映画祭」は角川シネマ有楽町にて今月31日まで開催