三木聡監督、亀梨主演作とジェシー・アイゼンバーグ主演作を比較
亀梨和也が一人33役で“増殖する俺”を演じて話題になった映画『俺俺』で知られる三木聡監督が30日、都内で行われたイギリス映画『嗤う分身』(リチャード・アイオアディ監督)のトーク付き試写会に出席した。
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文豪フョードル・ドストエフスキーの小説をベースに、見た目は全く同じながら性格は正反対のもう一人の自分が出現したことで、内気でさえない主人公(ジェシー・アイゼンバーグ)が全てを狂わされていくさまを描いた本作。三木監督は、主人公が増殖するという点で『俺俺』と共通している本作について「面白かったですよ、いろんな意味で。自分がやったことも含めて非常に近い部分がある作品だなと思いました」とコメント。
「僕の映画との違いは、僕はなるべく日常の風景に近い風景を作ろうとしていて、日常の中でいかにSFを起こすかっていうことを一生懸命考えて作品を作る。でも、この監督さんの場合は異世界を最初に作って、そのSF的空間に人物配置をしていくっていうね。アプローチの仕方が全く違う」と分析。
役者へのアプローチについても、「僕は(『俺俺』で)亀梨和也に『ダメな感じを演じないようにしてくれ』と要求したんです。演じないでダメそうに見えるにはどうしたらいいか。ダメを演じた時点で僕の非日常じゃないリアル空間の中の虚構が壊れるんじゃないかってね。でも、こっちは逆に劇空間がきっちり出来上がっているから、ダメってことをデフォルメしていく。そこの差が面白い」と興味津々。
見る側の視点の自由度を尊重したところにも好感を持ったといい、「僕は一人っ子だったので、主人公に感情移入して映画を見るのが苦手。一つの感情に引っ張っていくほうがヒットはしやすいけど、映画はそれだけではないだろうと思っていた。人間の営みや出来事をわりとフラットに公平な目線で見る自由度がこの映画にもある。久しぶりにこういう映画と出会えた」と本作を絶賛していた。(取材・文:名鹿祥史)
映画『嗤う分身』は11月8日よりシネマライズほか全国公開