米人気司会者ジョン・スチュワートがガエル・ガルシア・ベルナルと組んだ社会派作品とは?
米人気番組「ザ・デイリー・ショー」の司会者ジョン・スチュワートが、長編初監督を務めたガエル・ガルシア・ベルナル主演作『ローズウォーター(原題) / Rosewater』について語った。
本作は、イラン系カナダ人ジャーナリストのマジアル・バハリ(ガエル・ガルシア・ベルナル)がイラン人の母親の住む実家に滞在し、2009年のイラン大統領選挙を取材していた際に、突如イランの治安当局者に捕われ、118日間も拘束されていたという実話を描いたもの。マジアルとエイミー・モロイの共同原作「Then They Came for Me」を基にジョン・スチュワートが映画化した。
自身の番組で社会を風刺してきたジョンが、今作を描いた経緯は「現在、ジャーナリズム関連会社は予算を削減し、ほとんどのジャーナリストは会社団体に属さず、サポートもろくに受けずに活動している。先日、斬首されたジェームズ・フォーリーもフリーランスの記者で、彼は現地(ギャング)の人間に誘拐され、イスラム国に売られた。ジャーナリストたちは危険を伴いながら、われわれが知るべき情報を提供するが、そのような活動はもっと評価され、敬意を受けるべきだと感じたことが製作のきっかけだ」と明かした。
ガエルの演技について「 映画内でマジアルが尋問者に『立て!』と要求されて怖がるが、電話を許可され、妻に電話して彼女から子供を授かったことを告げられると言葉で言い表せない喜びに浸るんだ。彼の反応が気に入らなかった尋問者にすぐに暴力を振るわれるものの、その暴力を受けた時でさえも笑ったままでいるシーンがある。その演技で彼は、自分の演技手法を観客に気付かせずに自然にやってのけた。そんな演技ができるのはガエルだけだ」と絶賛した。
マジアルが拘束され、暴力を含めたシリアスな尋問を受けている中、ユーモアのある箇所も含まれている。「この映画で描かれるユーモアは、何も犯していない(マジアルが捕われる)全く予測できない状況から生まれたものだ。尋問でもイランの治安当局の人間が、さまざまなシナリオを勝手に作り上げ、(尋問しながら)マジアルをスパイに仕立て上げていく。そんな奇妙な出来事がマジアルの原作に記されている」と語る通り、尋問者を完全なる冷酷な人物として描かず、しょせん、彼も人間であることが深い意味合いを持たせた。
映画は、不条理な理由からとらわれの身となったマジアルの心理を克明に表現するガエルの演技に注目だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)