チベットで開催できないミス・チベットのコンテストを描いた映画とは?
ドキュメンタリー映画『ミス・チベット:ビューティ・イン・エグザイル(原題) / Miss Tibet: Beauty in Exile』について、ノラ・シャピーロ監督とミス・チベットの参加者テンジン・ケチェオが語った。
本作は、中央チベット行政府(チベット亡命政府)のあるインド領ダラムサラで、2002年から毎年開催されている「ミス・チベット」のコンテストに、米ミネアポリスに住むチベット人の祖父母を持つ少女テンジン・ケチェオが参加し、彼女を通してコンテストの模様と中国の支配するチベットの現況を描いた作品。
アメリカ人のノラ監督がチベットに興味を持ったのは大学で国際関係を学んでいた際、「ダライ・ラマ14世の書物を読んで亡命政府を知り、ドキュメンタリーを製作する前からチベットには影響を受けていたの。その後、子供が出演するシアター・カンパニーを題材にしたドキュメンタリーの撮影を通して劇作家と知り合ったの。その彼女がチベットを題材にした舞台劇を執筆していて、彼女によって、よりチベットへの興味が湧き、彼女の舞台劇を発展させた形でこのドキュメンタリーを製作することになったの」とチベットへの長年の思い入れがあったようだ。
テンジンは育った環境について「わたしの祖父母はチベットで暮らしていたけれど、(中国支配のため)インドに亡命したの。わたしが子供の頃、彼らは、あの時亡命できなかったら、隣人のように亡くなっていたと語っていたこともあった。でもそれ以降は、あの環境を思い出したくないのか、チベットでの出来事を語ることはなかった。インドで育った両親のもと、わたし自身もインドで生まれ、7才の時にチベット人の多く住むミネアポリスに移住してきたの」と明かした。
ミス・チベットと仏教との関連について、「今作に登場する中央チベット行政府の前首相ロブサン・テンジンは、このミス・チベットの開催に反対していた。彼は主導的なチベット仏教学者の一人でもあり、このミス・チベットの存在価値だけでなく、他の分野でのコンペティション(競争)を行うことさえも、仏教に反するという観点も持っていた。でも、ミス・チベットの参加者の誰もが、自分が仏教の教えに反することをしているとは全く思っていないの」とノラ監督は語り、彼女自身はそんな閉鎖的なチベットの文化に変化を求めている。
映画は、海外亡命したチベット人の子孫が、チベット文化の伝達活動をし、よりチベットへの興味を駆り立たせてくれる。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)