塚本晋也『野火』が日本初上映!濃密な内容に観客から熱心な意見!
塚本晋也監督とリリー・フランキーが22日、有楽町朝日ホールで行われた映画祭「第15回東京フィルメックス」オープニング作品『野火』の舞台あいさつに出席し、本作に対する熱い思いを語った。この日は俳優の森優作、音楽を担当した石川忠も来場した。
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アジアを中心とした世界の刺激的な作品が集まる国際映画祭「東京フィルメックス」のオープニング作品となった『野火』。本作の上映について、映画祭の林加奈子ディレクターは「塚本監督のターニングポイントとなる大傑作。どうしても上映したかった」とラブコールを送ったことを明かす。
壇上に立った塚本監督も「きっと観終わったら、100%げんなりされてしまうと思います。決して暴力シーンがふんだんにあるわけではないですが、戦争が始まったらこんなことではすまされないんだと。暴力は映画の中だけでたくさんという気持ちで作りました」と会場に呼び掛け上映はスタート。
大岡昇平の同名戦争文学を原作とした本作は、敗戦が濃厚となった第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、あたり一面に腐乱死体が転がる地獄絵図の中、飢餓状況に陥った日本兵の姿が描かれる。まるで戦場に放り込まれたかのような、87分の濃密な上映時間が終わると、観客の間から力強い拍手がわき起こった。
劇中で“おっさん”と呼ばれる兵士の安田にふんしたリリーは、「塚本監督の長年の思いが詰まった映画に参加できて光栄」と晴れやかな顔を見せると、「絶対に商業映画ではできないテーマを完成させたことが痛快」と本作の完成までに20年近い年月を重ねた塚本監督の執念を称賛する一幕も見られた。
塚本監督は「観ていただいた後は、げんなりしながらも、喫茶店にでも入って語り合っていただきたい」とコメント。観客からも「観る前は、おどろおどろしくてすごく怖いという評判を聞いていたので、観るのが怖かったが、大岡さんの原作が(戦争の悲惨さを)激しく感じられるように書いてあったので、映画の短い時間であの衝撃を伝えるには、あれくらい(激しく)やらないとダメだと思った。わたしは不快だとは思わなかった」など、熱心な意見が次々と寄せられ、塚本監督も満足げな顔を見せていた。(取材・文:壬生智裕)
「第15回東京フィルメックス」は11月30日まで有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇で開催