リチャード・リンクレイター監督が語る12年間撮影した新作『6才のボクが、大人になるまで。』への思いとは?
映画『スクール・オブ・ロック』のリチャード・リンクレイター監督が新作『6才のボクが、大人になるまで。』について語った。
本作は、両親(パトリシア・アークエット、イーサン・ホーク)の離婚で、母親、姉と共に暮らす6歳の少年メイソン(エラー・コルトレーン)が、祖母の住むヒューストンへ引っ越し、両親たちも再婚していく中でお互いの家を行き来し、厳しい環境の中で思春期を迎えていくというもの。6歳の少年とその家族の軌跡を12年間にわたって描いたヒューマンドラマ。
今作を手掛けて、映画製作への概念は変わったのか。「このような作品(12年以上にわたる撮影)は、すでにどこかの国で製作されている、と他から指摘を受けたりするものだが、実際にこのような作品はなかった。でも実は、このコンセプトは僕が大人になってからずっと考えてきたもので、それはまるで科学者が数式を解くように、僕は語り手として、制限された今作のストーリー構成と長年格闘しながら進めてきた。そしてできる限り今作をユニークに描こうと思って取りかかった。個人的に、映画という媒体が好きで、映画の構成の上では、まだまだ開拓の余地はあると信じてもいる」と新たな可能性も秘めていることを示唆した。
具体的な映画内のアプローチについて「通常の長編作なら、それだけでは構成がつながらないような、家族の親密な瞬間だけを集めたものが今作を占めている。あえて毎年キャラクターを意図的に成長させたり、ストーリーを拡大させてはいない。それらが映画全体の感触としてあり、観客は、映画内で観た前の年のシーンを基に、次の年のキャラクターの年齢のギャップを、推測しながら埋めている気がする」と明かした。
主役メイソンが写真に興味を示すのは「僕は、メイソンが中学や高校で何かしらアートに関わっていくことを事前に考え、この年齢で自己表現をし始める設定にした。それは、おそらく小説の執筆か音楽で、個人的にエラー自身はおそらくバンドを組むのではないかとも思っていた。だが彼は写真に興味を持った。僕も同じ年頃に写真を知っていたため、演出の上で切れ目ない自然な構成ができた。メイソンというキャラクターも写真が適していたと思う」と答えた。
映画は、12年間撮影したものの、編集につなぎ目を感じさせない構成が、自然な流れて家族愛を浮き彫りにしていく傑作。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)