北朝鮮の実情が明らかに
北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10~16日)にあたる13日、公開中のドキュメンタリー映画『金日成のパレード/東欧の見た“赤い王朝”』『北朝鮮・素顔の人々』のトークショーが都内・キネカ大森で行われ、北朝鮮難民救援基金理事長の加藤博氏と同基金国際部のケイト・ニールセン氏が登壇。脱北者が後を絶たない北朝鮮の現状について、「厳しい経済状況の中、1人、2人の逃亡よりも外貨を稼ぐほうに力点を置いているのではないか」と推測した。
北朝鮮からの難民救援に関わっている加藤氏は、「外交による交渉はとても時間がかかること。ところが、脱北した人は明日をどう生き延びるかに直面しているので、『助けてほしい』という声がわたしたちに届けば、安全に第3国に誘導している」と活動を説明。ただ、最近の脱北者は昔のように食うや食わずで倒れ込むといったイメージとは異なるという。「経済が破綻している北朝鮮では、比較的裏切る可能性の低い上流階級に外貨を稼がすために、外国に出稼ぎ労働者として出しているが、合法的にパスポートを取得した彼らの中には、滞在期限が切れる間際に逃げる者も多い」と分析する。
さらに加藤氏は、「都市生活者の中でも生産に関わっていない層、例えば警察、行政、教師などが特に厳しい」と指摘。「かつて金正恩が、『1人、2人逃げたって、外貨が入る方が重要だ』と言っているように、北朝鮮の経済状況を考えると、脱北者が出ることよりも、むしろ稼ぐことに力点がある。背に腹は変えられない状況ですね」と語った。
『金日成のパレード/東欧の見た“赤い王朝”』は、北朝鮮の建国40周年記念式典に招かれたポーランドの取材班が、同国の実態を映し出した1989年製作のドキュメンタリー。一方、『北朝鮮・素顔の人々』は、北朝鮮の人々が命を懸けて極秘裏に撮影した映像を基に製作された衝撃作で、この日は急きょ、共同でメガホンを取った朴炳陽監督と稲川和男監督が駆け付け、「2本立てで観ていただくことで、こういう国に拉致されている人がいるんだ、という意味合いがより理解できるはず」と訴えた。(取材:坂田正樹)
映画『金日成のパレード/東欧の見た“赤い王朝”』『北朝鮮・素顔の人々』はキネカ大森ほかで公開中