『ゆれる』西川美和監督、新作を現在準備中!
映画監督の西川美和が20日、渋谷のユーロスペースで行われた『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』公開初日トークショーに来場、現在、準備中だという自身の新作について明かした。
『ゆれる』西川美和監督、ズビャギンツェフ監督から受けた衝撃 画像ギャラリー
2003年の映画『父、帰る』で第60回ベネチア国際映画祭金獅子賞を獲得するなど鮮烈なデビューを果たしたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督。その後発表された作品は続けてカンヌ国際映画祭で賞を獲得するなど、世界的には高い評価を受けていたが、日本では未公開のままとなっていた。
『ゆれる』撮影前に『父、帰る』を観て衝撃を受けた、と切り出した西川は「非常に撮り方もストイックで、多くを語らずにキレがある作品でした。非常に寓話(ぐうわ)的で、どこの誰々さんという固有名詞がほとんど出ないところがわたし好み。兄弟の話で、厳格な父がいて。写真も大きなツールになっていて。絵のトーンも銀のこし(フィルム現像の際に独自の処理をほどこすことで彩度の低い独特の色合いに仕上げる手法)で撮影されていて。実は『ゆれる』は銀のこしで撮ろうというプランもあったんです」と『ゆれる』との共通点についてコメント。さらに「ちょうど男同士の葛藤をどう撮ろうかと考えていた時期だったので、やられたなと思った。一瞬、もう自分が撮らなくてもいいかもしれないと思わされた」と付け加えるほどにその衝撃は大きいものだったという。
それ以来すっかりズビャギンツェフ監督に魅了され、「それ以来、また次の作品が観たいなと思っていた」と思っていたという西川だったが、その思いに反して、日本ではおよそ10年もの間、ズビャギンツェフ監督の作品が公開されることがなかった。それだけにこれまで未公開作品だった『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』という2作品が公開となって、「配給が決まって公開となって本当によかったと思いました」と笑顔を見せた。
さらに今後の新作について質問を受けた西川は「今度の作品はちょっと時間をかけて撮ろうと思っているので、完成は再来年くらい。来年の4月くらいにクランクインして、来年の今くらいの時期にクランクアップ。もちろんずっと撮っているわけではなく、少しずつブロックに分けて撮るんですが。それで再来年の頭に仕上げを行って、その年の夏くらいに公開できたらと思っています」と付け加え、会場の期待をあおっていた。(取材・文:壬生智裕)
『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』は渋谷のユーロスペースにて公開中