英国最高峰の美術館に潜入した映画について西洋美術館館長「政治家の方も観て」とアピール!
上野の国立西洋美術館で17日、『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』公開前特別試写会が行われ、同館の馬渕明子館長、寺島洋子教育普及室長、新藤淳研究員、そして絵画保存修復家の岩井希久子さんたちが上映後のトークセッションに出席、日本の美術館を巡る現状を訴えかけた。
1824年創立、ダ・ヴィンチやレンブラントなど世界有数のコレクションを所蔵する英国ナショナル・ギャラリーに、“現存する最も偉大なドキュメンタリー作家”フレデリック・ワイズマン監督がおよそ3か月にわたり密着した本作。美術館の裏側をありのままに映しだしている。
馬渕館長は本作について「日本の美術館がこうだと思ったら大間違い。スタッフの数も違うし、施設もはるかに及びませんから」と笑いながらも、「日本の美術館に何が足りないのかがよく分かる。文化行政にたずさわる政治家や、財務省の方にも観ていただきたい」とアピール。
ナショナル・ギャラリーには名画の修復作業にたずさわるスタッフが在駐しており、本作では彼らの仕事ぶりが映し出される。馬淵館長も「日本の国立美術館には、絵画のホームドクターが誰もいません。もちろん外部のスタッフの方に時々はチェックしてもらいますが。(劇中でも)絵画に赤いスプレーをかけられていましたが、次の日には元に戻っている。日本なら元に戻すのにどれだけの時間がかかるか……」とコメント。
ナショナルギャラリーでは無料のワークショップやガイドツアーを定期的に実施。万人に開かれている。しかし日本の場合、子供たち向けにガイドツアーを行っていても「静かにしてくれ」と言われることも多々あるという。「その時は、音量は注意しますから、途中でやめさせないでくださいとお願いしています。最近はボランティアの方にスタッフのベストを着用してもらうことで、そういった声は少なくなってきていますが」と寺島教育普及室長。馬渕館長も「ナショナルギャラリーでは本当にたくさんのギャラリートークが行われている。お客さんはそれをうまい具合に避けて鑑賞し、子供たちがいなくなってから、あらためてそこの箇所に戻って鑑賞すると。ギャラリートークをうるさいものとして見ることはヨーロッパの美術館ではありません」と理解を求めた。(取材・文:壬生智裕)
『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』は1月17日よりBunkamura ル・シネマほか全国公開