仏芸術文化勲章受章・河瀬直美監督が語る今後
先ごろフランス芸術文化勲章を授与されたばかりの河瀬直美監督が、「これからもおごることなく、謙虚な気持ちで良い映画を作り続けていきたい」と今後への思いを語った。
奄美大島の豊かな自然やおおらかな民俗信仰を背景に、思春期の少年と少女の恋愛と成長を描いた『2つ目の窓』のブルーレイ&DVDの発売を21日に控える河瀬監督。これまで生まれ育った奈良県を作品の舞台として選ぶことの多かった彼女だが、8年ほど前に自分の家系が奄美大島の出身であると知り、最愛の養母が亡くなったことを契機に、改めて自分のルーツをたどるべく奄美大島で映画を撮ろうと決めたという。
河瀬監督は、「奄美といえば海を連想されるかもしれませんが、実は森も山も原生林もある。海と森がつながっていて、その中で育まれ循環する命というものを描きたかった」と語る。現地ではここぞという奇跡的なタイミングで、満月や台風など撮影に必要な自然現象に恵まれ、「何か人間の意思を超えた大きな力が働いているように感じた」と奄美での神秘的な体験を振り返った。
主演は現在17歳の村上虹郎と21歳の吉永淳。オーディションでは実際に奄美の海に潜ってもらい、大自然のエネルギーに負けない生命力を最も感じさせる二人を選んだ。俳優・村上淳の息子でもある虹郎は、演技デビューの本作で父親と初共演。しかも親子の役だ。もちろんセリフは脚本に書かれているが、リアルな父親と息子の会話を引き出すため、撮影では「自分の言葉にしてもらうまで3時間」も粘ったこともあったそうだ。
「この映画では人類の未来へ希望を示したかった。何年たっても色あせない作品になったと思う」と自信を見せる河瀬監督は、今年の6月公開予定の最新作「あん」を準備中。今後の活躍にますます期待していきたい。(なかざわひでゆき)
映画『2つ目の窓』ブルーレイ&DVDは1月21日発売