ティム・バートンが語る、ゴースト・ペインター事件を起こした夫婦の実像
映画『チャーリーとチョコレート工場』などの鬼才ティム・バートン監督が、新作『ビッグ・アイズ』について語った。
1950年代から1960年代にかけて世界中でブームを巻き起こした、大きな瞳の子供を描いたウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)の「BIG EYES」シリーズは、驚くことに彼の内向的な妻マーガレット(エイミー・アダムス)が描いたものだった……というアート界を揺るがした衝撃の実話を映画化したのが本作。
まず、注目なのはこのウォルター&マーガレット夫妻の夫婦関係。当時、女性が主張することの少なかった時代を生きたマーガレットについてバートン監督は「プライベートを大切にし、シャイで、慣れないと彼女との間に距離を感じるが、内面はインテリで、毒のあるユーモアのセンスを持っていて、僕がこれまでに会ったことのない女性」と実際に会った彼女をこう評している。
その一方で、すでに亡くなっているウォルターに関しては「不動産屋に勤めたトリッキーな人物で、その場の状況ごとに虚勢を張るため、彼の歴史についても定かではない」とコメント。しかし「彼はマーガレット作品のスポークスマン的存在だったため、ウォルターが居なかったら、おそらく彼女の作品は誰も見ることができなかっただろう」とも明かしており、そんな真実が隠された複雑な夫婦関係が興味深い。
さらに当時はポップカルチャーが台頭してきて、「BIG EYES」シリーズはある意味、ポップカルチャーの波に乗ったその時代の代表作ともいえる。そのことについてバートン監督は「当時は、このポップカルチャー文化の作風を嫌っている人も多く居たが、その一方で確かに人気を博し、当時の文化としてしっかり根付いていた」と語り、彼もまたその文化のパワーを感じていた一人だったようだ。
そんな本作は、「BIG EYES」シリーズという芸術作品だけでなく、当時のポップカルチャーの影響力、男尊女卑の時代、夫婦関係とさまざまな要素が詰まった見どころ満載の秀作になっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
映画『ビッグ・アイズ』は1月23日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにて全国順次公開