アカデミー賞『それでも夜は明ける』の黒人脚本家が米ABCで手掛ける「アメリカン・クライム」とは?
映画『それでも夜は明ける』でアカデミー賞脚色賞を受賞した黒人脚本家ジョン・リドリーが、クリエイターとして手掛けた新作テレビシリーズ「アメリカン・クライム(原題) / American Crime」について語った。
本作は、人種差別によって起きた殺人事件から法廷への争いをめぐって、人種の違いや男女差、階級差を浮き彫りにしていくというもの。ティモシー・ハットン、フェリシティ・ハフマンなどが出演している。
製作経緯は「今から1年半前(オスカー受賞前)に、ABCから『現在のアメリカの立ち位置を、われわれが議論すべき点を含めながら、犯罪を通して描いてみないか?』とアプローチされていた。その話を聞いたとき、大きなテレビ会社にとっては挑発的なコンセプトだと思った。そこで、警察、検察官、弁護士などの視点ではなく、被害者の家族(原告)や被告の家族など、家族の観点から描こうと思ったのが製作のきっかけだ」と明かした。
人種の違いや男女差、階級差を交錯させて描くことの重要性について「僕はこの番組で描かれる犯罪を通して、人間の条件を探究しようと思っていて、それらは非常に重要だ。例えば、僕がまだ学生だった頃にセントラルパークで女性ランナーがレイプされた事件があった。その後、わずかな時間で若者たちが逮捕され有罪となった。ところがそれから何年もたって、その若者たちが冤罪(えんざい)だったことがわかった。でもその間、被害者の家族や冤罪(えんざい)の若者たちの家族は、毎日あの事件と向き合っていた。あの事件に関わった人々は決して忘れることができない。今作でも、僕にとっては犯罪の解決よりも、そんな面が重要だった」と答えた。
テレビドラマの脚本を執筆することになって「映画は、どんなにスローペースの作品でも、2時間以内のどこかで観客をひき付けなければいけない。それは大作でも低予算作品でも同じだが、僕らが手掛けたこのテレビシリーズは全部で11時間ある。当然、映画とはペースが違うし、より意図的にじっくりと描けるアプローチもでき、映画のように次から次へと急いで出来事を展開させていく必要もない。 そのため脚本家にとって良いのは、11時間の中で多くのキャラクターを描くことになっても、時間を短縮させて描いている感じがしないことだ」と緻密に描いているようだ 。
同番組は、3月5日から米ABCで放映される。(取材・文 細木信宏/Nobuhiro Hosoki)