中国の巨匠、高倉健さんの思い出を語る「最も敬愛する人」
巨匠スティーヴン・スピルバーグも絶賛したという、夫婦の純愛ドラマ『妻への家路』のプロモーションで来日したチャン・イーモウ監督が、『単騎、千里を走る。』でタッグを組むなど親交の深かった高倉健さんとの思い出を語った。
チャン・イーモウ監督&コン・リー8年ぶりのタッグ作『妻への家路』フォトギャラリー
文化大革命に引き裂かれた夫婦の再会から始まる本作『妻への家路』で夫の記憶だけを失ってしまった妻ワンイーを演じたのはコン・リー。『SAYURI』『ハンニバル・ライジング』などハリウッドでも活躍する彼女だが、1987年『紅いコーリャン』の主演に彼女を抜てきしたチャン監督は「彼女はとても細く、わたしが役に求めていた北方女性のイメージとは違った。でも、カメラを通して見た彼女の存在感がとても魅力的だったんだ」と当時の様子を振り返る。
その後、『秋菊(しゅうぎく)の物語』『活きる』などで世界を魅了してきた名コンビの約8年ぶりのタッグとなる本作。「出演契約前の段階で、まだ脚本を読んでいない彼女が簡単なメイクでスチールカメラの前に立っただけで、スタッフ全員が『この役は彼女しかいない!』と思ったほど、あれから30年近くたっても彼女の魅力は変わらない」と、あらためて自身が発掘した名女優を絶賛する監督。『初恋のきた道』のチャン・ツィイーら次々と新人女優を発掘してきた彼は本作でも、ワンイーのまな娘役に新人チャン・ホエウェンを抜てきしている。
昨年亡くなった高倉健さんとは、2005年の『単騎、千里を走る。』で組む前から親交があった監督だが、2008年の北京五輪で彼が開・閉会式でチーフディレクターを務めた際には日本刀をプレゼントされている。「高倉さんはわたしの若い頃のアイドル的存在で、最も敬愛する人物。日本では刀は持ち主を守ってくれるという意味があるとのことで、わざわざ北京まで持ってきてくださり、自ら磨き方も教えてくださいました。以来、わたしのデスクの後ろに飾っていますが、刀というより高倉さんに守られている気がするんです」と語る監督と名優の国を超えた強い絆は、永遠といえるだろう。(取材・文:くれい響)
映画『妻への家路』はTOHOシネマズシャンテほかで上映中