高倉健さんとの思い出も…『酒中日記』坪内祐三×内藤監督×杉作J太郎の酩酊トーク
著名文化人たちが酒を酌み交わし語り合う、飲み助のための異色映画『酒中日記』の公開前夜祭トークショーが20日、東京・新宿で行われ、原作者で主演のエッセイスト・坪内祐三と、共演の漫画家・杉作J太郎、メガホンの内藤誠監督が出席。缶ビールやハイボール片手に、酔うほどに舌も滑らかになる酩酊(めいてい)トークを展開した。
本作は、坪内の人気エッセイ「酒中日記」を基に、坪内と旧知の内藤監督が撮り下ろしたドキュメンタリードラマ。案内役の坪内が、作家、編集者らが夜ごと集う文壇バーを巡り、重松清、都築響一、中原昌也、南伸坊、杉作らと気ままに語り明かす。太宰治がモデルにしたママの営むバー「風紋」、新宿ゴールデン街の「しん亭」「猫目」、銀座の「ザボン」などがその舞台。内藤監督は、1970年代に東映プログラムピクチャー(2本立てプログラムのメイン映画に併映された2番手作品)を多く手掛け、2011年の前作『明日泣く』(斎藤工主演)が24年ぶりの監督作として話題になった。
「(本作が)ヒットしたら、もう外は歩けないですね」と冷やかす杉作に坪内は、「主演といっても、俺は相手を引き出す狂言回し」と言いながら「(段取りの行き違いで)待たされた重松さんは、イラついて映画をぶっ壊そうって勢いだし、中原さんは予定と違う日に現れるし、大変だった」と苦労を振り返る。内藤監督が「J太郎さんだって忙しすぎて、58分しか(現場に)いられないっていうから、カメラ3台を同時に回して、ライティングの手直しなしの“120度ライティング”で撮った。これ、ピンク映画の早撮りの手法」と話すと場内は爆笑に包まれた。
この日のイベントでは「今日は『網走番外地』(1965年)の予告編も持ってきた」という内藤監督による特別プレゼント上映も。高倉健さん主演、石井輝男監督のこの作品で、内藤監督はチーフ助監督を務めた。「当時の東映は、予告編は助監督が作った。(内藤監督は)予告編の天才って呼ばれていた」という坪内の説明に、内藤監督は「健さんが『今年度の予告編賞』って言って、俺にロンジンの腕時計をくれました」と当時を振り返った。(取材/岸田智)
映画『酒中日記』は東京・テアトル新宿ほか全国順次公開