『セッション』J・K・シモンズが語る鬼音楽教師フレッチャー「息子の先生だったら引き離す」
世界的ジャズドラマーを目指して名門音楽学校に入学したニーマン(マイルズ・テラー)と伝説の鬼音楽教師フレッチャーの姿を描いた衝撃作『セッション』でフレッチャーを怪演し、本年度アカデミー賞助演男優賞に輝いたJ・K・シモンズが電話インタビューに応じ、フレッチャーの指導の在り方について語った。
完璧な音楽を求め、生徒を高いレベルに引き上げようとするフレッチャーは、過激なやり方でニーマンを肉体的にも精神的にも追い詰めていく。シモンズは「僕は彼の指導法を絶対好まないから、もし自分の息子がフレッチャーみたいなやつの生徒だったらきっと息子をその先生から引き離す」としつつも、「モラルを度外視した場合の彼の指導の効果的な部分、そしてやっぱり虐待的なところがあるじゃないかっていう二面性みたいなものが、この『セッション』という映画の中核の部分にある」と明かす。
「人によっては指導者としてとても助けになると思う。僕自身の好みで言うと、育ててくれるタイプの指導者が好きだけどね」と笑ったシモンズ。「もしフレッチャーがああいう風に人を辱めることや傷つけることを言ったりせず、生徒を高めるため努力をする、努力をさせる、背中を押すといったことでその人自身がもしかしたら気付いていないような才能を引き出すことができるのであれば、良いことだと思うんだけどね。ただ、ああいう風に人にダメージを与えるような態度は良くないんじゃないかなというのが個人的な意見だ」と続けた。
最初は言われるがまま&されるがままのニーマンだが、絶え間ない努力を通じてフレッチャーと渡り合うようになっていく。どこに行き着くかわからない緊迫した二人の関係についてシモンズは、「元々監督が書いた脚本の中に、二人の変化というものが非常にクリアな形で描かれていた。やっぱり監督にとっても自分自身にとっても、ストーリーテラーとしてまさにこの二人の関係が変化していく部分というのをきちんと伝えるということがとても重要だった」と本作のポイントを語る。
「もう一つ重要だったのは、『ファウスト』的な、自分の芸のために、あるいは成功のために魂を売る、そういう側面しか見えないような物語にはしたくないってところ。そこは監督と二人でこだわった部分なんだ。つまり、厳しい指導に耐え、ニーマンが自分の中に徐々に強さというのを発見して、最後に成功に登り詰めるみたいな、一元的な見方しかできないような関係にはしたくなかった」。
狂気のレッスンの果てに待ち受ける衝撃のラストについては「何がいいとか悪いとかということではない、オープンな解釈ができる終わり方にしたいと意識していたから、二人の関係を描くときにもその点はとても重要だった」とのこと。「それをどう受け止めるかというのは、観た人々がそれぞれに感じてくれればいいことだと考えているんだ」と観客に判断を委ねていた。(編集部・市川遥)
映画『セッション』は4月17日よりTOHOシネマズ新宿ほかにて全国順次公開