細田守監督、3年ぶりの最新作で目指した“アニメの王道”への挑戦
『サマーウォーズ』『時をかける少女』などを生み出した細田守監督が、約3年ぶりに製作した最新作『バケモノの子』。監督自身が脚本から手掛けている同作で目指した「王道のアニメ映画」作りについて、スタジオ地図の齋藤優一郎プロデューサーが語った。
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『時をかける少女』『おおかみこどもの雨と雪』など比較的女性をメインにした作品が多かった細田監督だが、本作の主人公は人間の少年・九太。企画は「夏に子供と大人が楽しめるアニメ映画の王道」を作るところからスタートした。「少年がひと夏の冒険をして一皮むけて大人になる」というストーリーに挑戦することで、「僕らでいうと新しい夏のアニメ映画の王道をやろうと思っている」という。日本の夏のアニメには子供と大人をつなぐ「社会的な役割や機能がある」と齋藤プロデューサーは述べつつ、さまざまなプロデューサーや監督たちがつなぐその系譜を絶えさせないようにと、責任を感じているという。
冒険活劇ということで劇中では、九太の師匠で熊のような“バケモノ”の熊徹との修行シーンなどのアクションも描かれる。その影響もあり、前作『おおかみこどもの雨と雪』のときと比べると、作品のプロットとなる絵コンテも約2か月遅れていたとのこと。細田監督の作品としては、類をみないほどぎりぎりのスケジュールで進行しているという。
また細田監督の挑戦は声優陣の起用にもみられる。これまでオーディション主義という形で、映画のキャラクターに合う声を探してきた細田監督だったが、今回はオーディションも行いつつも熊徹役に関しては役所広司しかいないと直接オファー。“バケモノ”でありながら、人間の九太と師弟関係を結び、「子供の成長」を見守る親として九太と共に成長していく熊徹は、日本映画でこれまで「家族」を扱ってきた作品に出演してきた役所にお願いしたいと監督は決めていた。ちなみに九太の少年期の声優には宮崎あおいが決定したが、ここには少年役を女性が担当するというアニメの形式美という部分もあるという。
『サマーウォーズ』以降、「新しい家族の形」をテーマとしている細田監督。王道のストーリーが展開される中で、バケモノ界や人間界を行き来し成長する九太は自身のアイデンティティーへの悩みを抱えることになる。そのとき九太の周りの人物たちが彼の成長を肯定し祝福する姿は、監督の子供を見守る社会へのメッセージなのかもしれない。(編集部・井本早紀)
映画『バケモノの子』は7月11日より全国公開