『境界の彼方』はハッピーエンドに!石立監督が詰め込んだ「京アニ」イズム
2013年にテレビ放送された人気アニメ「境界の彼方」を2部構成で映画化したシリーズ最新作『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇』を監督した石立太一が、本作の見どころについて語った。
二人を待つハッピーエンドは?『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇』予告編
数々のヒット作を送り出してきた人気アニメスタジオ「京都アニメーション」(以下、京アニ)が制作した本作は、異形の存在・妖夢を体内に宿す少年・神原秋人と、妖夢を倒すべくやって来た異界士の少女・栗山未来という世界から拒絶された二人が出会い、やがて惹(ひ)かれあうさまを描き出す。
数多くの支持者を集める京アニだが、「これまではこの手のファンタジックな作品は扱わずに、だいたいが思春期の子たちの日常を描くような作品が多かった。だから今回やってみて、ファンタジーは難しいなとあらためて感じました」という石立監督。
しかしながら石立監督は、この「境界の彼方」が、“京アニイズム”が詰まった作品だと自負する。「当社の作品は必ず観終わった後に幸福感に包まれる。そういう作品が好きな人たちが集まっている会社。だからみんなそこは踏み外さないように、観終わった後に優しい気持ちや、幸福感につながるような作品を作ろうというのは、会社の理念として伝統的にあります」と切り出すと、「確かに二人にはつらい運命が次々と襲いかかりますが、最後にはちゃんとみんな幸せになります。その幸せが観ていただいた方にも伝わっていればとてもうれしいです」と強調する。
テレビシリーズでは、全ての戦いが終わりハッピーエンドを迎えた二人。しかしそのテレビシリーズを再構築した劇場版の前作となる『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 過去篇』のクライマックスでは、その喜びもつかの間。戦いの代償なのか、未来の記憶が瞬く間に消えてしまう。新たな試練が二人に降りかかり、テレビシリーズから観続けてきたファンを驚かせた。「個人的には、人生って一筋縄でいかない。良いも悪いも含めて人生なんだと思うんです」という石立監督は「雨が降らなければ何も固まらない。観ている最中は、お客さんにも『もういい加減に許すから、二人は幸せになってくれ』と思ってもらいたいんです」と笑いながら付け加えた。(取材・文:壬生智裕)
『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇』は全国公開中