原恵一監督が敬愛する漫画家とは?『クレしん』名シーン誕生秘話を明かす
江戸風俗研究家で文筆家、漫画家である杉浦日向子の代表作「百日紅」を長編アニメ化した映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』の原恵一監督が、杉浦から受けた影響を明かすと共に天才浮世絵師・葛飾北斎のすごさ、魅力についてあらためて振り返った。
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実はこれまで製作してきた映画にも杉浦作品を引用していたという原監督。「『百日紅の白木蓮の花がポタポタ落ちるシーンは、実は『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』でもやったくらいで。それぐらい好きだったので“ついにやるんだ!”という喜びと同時に“オレで大丈夫なのか”というプレッシャーもすごかった」と胸の内を明かした。
そこまで敬愛する杉浦作品の魅力を損なうことなく映像化するために原監督が徹したのは、「杉浦さんのいい道具になること」だった。「原作のエピソードを使ったものに関してはセリフも一言一句変えていないし、コマ割りもなるべくそのままにしています。そのコマの間を自分なりに埋めていったような感覚ですね。杉浦さんは漫画家としても、演出家として天才だと思います」と話す。
原監督がとりわけ身を砕いたのは、ヒロインのお栄、そして彼女の父である葛飾北斎の絵師としての力、絵の力の表現。「北斎がまずすごいのはその作品の数の多さ。本当に絵を描くことにしか興味がなかったんだろうなと。風景画の視点も独特ですよね。特に『神奈川沖浪裏』なんて、よくこんな絵が描けたなあと圧倒されますね。そんな天才的な画力を持つ絵師を描く物語なわけですから、画(え)に説得力がないとダメだと思っていました」と苦労を振り返る。
また原監督の思い入れが深かったという波のシーンは、ベテランのアニメーターに作画を依頼。「原画は松本憲生さんにお願いしました。松本さんにしか描けないだろうと。この作品には今回初めて一緒にやらせていただいた井上俊之さんをはじめ日本のトップアニメーターたちが参加してくれています。その躍動感のある映像を見てもらえれば、お栄や北斎の絵のすごさ、魅力もちゃんと伝わると思っています」と自信をのぞかせた。(取材・文:永野寿彦)
映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』は全国公開中