なぜ今!?おとぎ話実写化ブームのワケ
ここ数年、ハリウッドで増え続けているおとぎ話の実写映画化。その人気の理由について検証した。
『スノーホワイト』や『ジャックと天空の巨人』あたりから火が付いたおとぎ話の実写化映画ブーム。その後も『マレフィセント』や『シンデレラ』などのヒットが相次いでおり、今後も『PAN~ネバーランド、夢のはじまり~』や『ビューティー・アンド・ザ・ビースト(原題) / Beauty and the Beast』などの公開が予定されている。
誰もが粗筋や登場人物になじみのあるおとぎ話は、観客にとって敷居が低いという意味で映画化に適しているといえよう。また、最新のVFX技術で夢の世界をダイナミックに再現するという面白さもある。『スノーホワイト』などブーム初期の作品は、確かにそういう傾向が強かった。しかし、それだけでヒットが続くとは考えにくい。
例えば、『マレフィセント』では邪悪な魔女マレフィセントを、政治や戦争に明け暮れる男性社会の犠牲者として捉え、「眠れる森の美女」の物語にフェミニズム的なメッセージを託した。また、『シンデレラ』では自らの意志で階級差を克服する男女の純愛を通じて、古い伝統や習慣からの解放をうたい上げた。つまり、誰もが知るおとぎ話に現代的な解釈を加えることで、大人の鑑賞にも耐えうる上質な作品としてよみがえらせているのだ。
これは、おとぎ話の実写化ブームの原点として絶大な人気を誇り、先ごろ全米放送された最新シーズンでは『アナと雪の女王』のアナとエルサが登場したことも話題となったドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」にも同様のことがいえる。
国家間の政略によって翻弄(ほんろう)されつつも、自らの手で未来を切り開こうとする白雪姫と王子。そんな白雪姫を憎悪する女王は、感情が理性に勝ることで暗黒面におちてしまった哀れな女性として描かれる。他にも、「美女と野獣」や「赤ずきん」「シンデレラ」などのおとぎ話に新解釈を加え、互いをクロスオーバーさせることで、示唆に富んだ奥の深い物語が展開するのだ。
現代人にも共感できるリアルな人間ドラマ。それこそが実はおとぎ話の実写化ブームの鍵なのかもしれない。(文・なかざわひでゆき)
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