トライベッカ映画祭の観客賞受賞作品とは?
今年のトライベッカ映画祭で観客賞を受賞した新作『キング・ジャック(原題) / King Jack』について、フェリックス・トンプソン監督、ダニー・フラハティ、クリスチャン・マドセン、チャーリー・プラマーが語った。
本作は、小さな田舎町で暮らす15歳の少年ジャック(チャーリー)が、父親不在で母親もかまってくれず、さらに学校でも年上の男子シェーン(ダニー)にいじめられていた夏のある日、いとこのベン(コーリー・ニコルズ)がジャックの家に居候に来たことで、ジャックに変化が訪れるというストーリー。クリスチャンはジャックの兄トムを演じ、トンプソン監督は今作が長編デビュー作となる。
主人公ジャックを演じたチャーリーは「ユタ州でテレビ番組の撮影をしていた際に、今作のオーディション用テープを送った。するとフェリックスが僕に会いたいと言ってきて、2、3時間共に時間を過ごし、それから1か月後にキャスティングされた」と語った。彼は、テレビドラマ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」にも出演したことがあり、今後の活躍が期待される。
今作の製作経緯についてトンプソン監督は「若い頃に出会ったある作家が、『自分でキャラクターをクリエイトすることはない。全ては自分の記憶から呼び起こしたものだ』と語っていて、それが僕に感情的な反応を引き起こし、僕の執筆過程を助けた。そのため今作に登場する少年たちは、僕が育った環境に居た少年たちを基にしている。そんな少年たちの成長過程を通して、自分の世話よりも他人の世話をすることが重要だということを学んでいくことを伝えたかった」と語った。実体験が基になっているため、映画もリアルだ。
演技上の挑戦について、(マイケル・マドセンの息子でもある)クリスチャンは「毎日、ダークな要素を持つ兄トムを演じることが怖かった。自分と全く違う性格を繊細に演じなければならなかったが、フェリックスがセットで僕を導いてくれて、あとはそれに任せるだけだった」と語った。また、いじめ役シェーンを演じたダニーは「僕の役柄も僕と全く違った性格なんだ。僕は痩せこけているため、あえて人がおびえるように全力で演じたが、それは僕の2人の兄から受けた過去の苦痛への怒りを呼び起こしたものだ」と明かした。
映画は、青春時代の突発的な行動や感情の中、人付き合いの大切さを認識させてくれる。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)