広瀬すずに見た大物女優の片りん!是枝監督が語る『海街』4姉妹の魅力
綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが姉妹役で豪華共演を果たした映画『海街diary』が13日に公開された。キャスティング時はまだ無名だった広瀬も、今やCMやドラマに引っ張りだこで、「いま日本で一番忙しい16歳」と言われるまでに大ブレイク。彼女がそこまで人を惹(ひ)きつけるのはなぜなのか。メガホンを取った是枝裕和監督がその魅力を語った。
本作は、吉田秋生の同名ベストセラーコミックを映画化した家族ドラマ。音信不通だった父親の葬儀をきっかけに共同生活を始めた3姉妹の幸(綾瀬)、佳乃(長澤)、千佳(夏帆)と腹違いの妹すず(広瀬)の心の交流を、鎌倉の四季を通して描く。
すず役のオーディションで、是枝監督の目に留まったのは、ブカブカの制服を着た、ちょっと猫背の純朴な少女。まだブレイク前の広瀬だった。「何物にも寄り掛からず、一人で立っている感じがした。お芝居させたら抜群で、おでこを出したら原作とそっくりのすずがいた」。周りを見渡せば、他のスタッフたちも納得の表情だったという。
現場に入ってからも広瀬は期待を裏切らなかった。是枝監督は「すずの希望で台本は渡さず、セリフは現場で口伝えをして決めていった。物語を知らずに、彼女はその瞬間に集中して演じていましたが、適応能力が高く、物おじせず、そして勘がとてもいい。大物感がありますね」と絶賛。肩を抱き寄せられると、抱き寄せられた側の瞳から一滴の涙を流す。広瀬の心にはまるで高感度の感情センサーがついているようだ。
ただ、広瀬の輝きは、広瀬だけで成り立ってはいない。彼女の成長を見守る3姉妹と、周りの大人たちの素晴らしい存在があったからだと是枝監督は強調する。「綾瀬さんは天然なイメージがありますが、僕は彼女の言葉遣いや所作がとても美しいと感じ、(しっかり者の長女)幸役ができるなと確信していた。長澤さんは、肢体の美しさと躍動感のある演技。夏帆さんは一番映画女優らしい人で、いい在り方を画面の端々で発揮してくれる」と評価する。
この4姉妹をどうしてもカンヌ国際映画祭へ連れて行きたかったという是枝監督。その思いは見事、現実のものとなり、4人はカンヌのレッドカーペットを監督と共に歩いた。「自分が関わった映画が人にどう届くのか。それを目撃することは、『次に自分は何をすべきなのか』を考えさせてくれる時間」。女優として生きていくための財産を、是枝監督は愛する4姉妹に渡したかった……。その真意はきっと、彼女たちの心に届いていることだろう。(取材:坂田正樹)
映画『海街diary』は公開中