特殊メイクの巨匠リック・ベイカー、映画業界から引退
『グリンチ』『メン・イン・ブラック』でアカデミー賞メイクアップ賞(第85回からメイク・ヘアスタイリング賞に呼称変更)を受賞し、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオ「スリラー」のメイクを担当したことでも知られる、特殊メイク界の巨匠リック・ベイカーが映画業界からの引退を宣言した。リックは南カリフォルニア公共ラジオ「89.3 KPCC」で、「今僕は実際、映画業界から引退していて、自分がやりたいことをできるのが楽しみなんだ」と語っている。
【写真】時代を超えて衝撃を与える、巨匠リック・ベイカーが手掛けたメイク
リックは、『狼男アメリカン』(1981)で第54回アカデミー賞のメイクアップ賞を受賞したことを皮切りに、同部門で11度のノミネート、7度の受賞を果たしている。『マイティ・ジョー』(1998)では視覚効果賞にノミネートされた。そのほかの代表作は『スター・ウォーズ』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』『グレムリン』など。
引退を考えたきっかけについて、リックは「僕は64歳になったし、仕事は今もせわしない。僕はちゃんと仕事をしたいんだけど、依頼者はより速く安く仕上げることを望んでいる。それは僕がしたいことじゃないんだ。だから僕はやめ時だと決意した。何かのデザインやコンサルティングは検討するかもしれないけど、もう大きなスタジオで働くことはないだろうね」と説明。
またCGの多用により、メイクアップ技術の必要性が薄れていったことについても言及。昨年まで所有していたデザインスタジオの従業員もリストラしたといい、「業界全体が変わったんだ。メイクアップ技術をふんだんに使うような作品はもう存在しないね。何かあるんじゃないかって期待していたけど。『メン・イン・ブラック3』の時は良かったけど、最後の仕事だった『マレフィセント』は基本的にガレージの中で仕事していた」と明かしている。
現在リックは、絵や彫刻、3Dデジタルデザインなどに着目しているという。彼がこれまで手掛けたマスクなどの400個以上の作品は、「Prop Store」協力の下、現地時間29日にロサンゼルスで行われるオークションで競売にかけられる。(編集部・井本早紀)