早くもオスカー候補?主演が語るサンダンス映画祭ダブル受賞の話題作
今年のサンダンス映画祭で審査員賞と観客賞をダブル受賞した話題作『ミー・アンド・アール・アンド・ザ・ダイイング・ガール(原題) / Me and Earl and the Dying Girl』について、主演トーマス・マンが語った。
本作は、高校生グレッグ(トーマス)が親友アール(RJ・サイラー)と名作のパロディー映画を製作していたある日、白血病を患うレイチェル(オリヴィア・クック)と知り合い、衰弱していく彼女のために特別な映画を製作するというストーリー。作家兼脚本家ジェシー・アンドリュースの同名小説を、アルフォンソ・ゴメス=レホンが映画化した。
過去に出演した作品との違いについて「これほど感情的に疲れる映画に出演したことがなく、個人的に俳優として到達できないと思っていた地点にたどり着けたと思う。いろいろな意味で自分を覚醒させてくれて、成長した気もする。このグレッグという役には僕にも共感できる部分がたくさんある。脚本は自己中心的で、頑固なティーンエイジャーのグレッグを見事に描いているよ。それに自分が世界の中心ではなく、徐々に無償の心を持つことをグレッグが学んでいくレッスンもつづられている」と答えた。
黒人の友人アールとの関係が面白い。「グレッグとアールは共にのけ者の存在であることを認識している。アールの家庭形態と環境は複雑で安定していない。そのためアールは、ノーマルな家庭を持つことに感謝できていないグレッグをねたんでもいるんだ。さらにお互いが『友達のためなら何でもしてあげるよ!』と言葉にするようなタイプではなく、どこか暗黙の絆で結ばれている。そんな彼らは、他の学生と違って曖昧で難解な映画が好きなんだ」と語ったように、映画ではリアルな友人関係が描かれている。
6分間の長回しの撮影シーンについて「あれは僕がこれまで演じたシーンの中で最も誇りに思っているものだ。僕らのような経験の浅い俳優たちを信頼して6分間も監督がカットせずに撮影することはまれだ。そのシーンは、グレッグが初めて人(レイチェル)の話をちゃんと聞かなければいけない状況下で、(映像では)レイチェルが大人びた決断をして、グレッグは後ろで子供じみた反応をしている。ただこのシーンは、リハーサルもせずに、4度のテイクで見事に撮り終えたんだ」と満足げに語った。
映画は、繊細な少年少女の感情を余すところなく描いたオスカー候補の秀作だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)