絶頂期の女優の容姿をスキャンして映画を作るハリウッド…イスラエルの鬼才の新作を山村浩二が語る
イスラエルの鬼才アリ・フォルマン監督がスタニスワフ・レムのSF小説「泰平ヨンの未来学会議」を基に描いた映画『コングレス未来学会議』の公開記念トークイベントが17日、下北沢の本屋B&Bで行われ、『頭山』などで世界四大アニメーション映画祭のグランプリを獲得したアニメーション作家・山村浩二と、現代美術家・タカノ綾が出席。「現実と虚構の境界線をどこまでも描いて、現実の着地点をはぐらかし続けるのがすごい」(山村)、「掘れば掘るほどいろんな要素が出て、観た後もずっと頭に残っている」(タカノ)と作品の魅力を語り合った。
本作は、俳優の絶頂期の容姿をスキャンし、そのデジタルデータを映画会社が好きなように使って映像を作り出すというビジネスが誕生したハリウッドを舞台に、ピークを過ぎた女優が、難病の息子を救うため自身のデータを売り渡したことから起こる驚愕(きょうがく)の未来を描くSF作。主演のロビン・ライトが、実写やアニメキャラとして何タイプも登場するなど、実写とアニメ映像の交錯も見どころになっている。
フォルマン監督が自らの戦争体験をドキュメンタリーアニメ化した前作『戦場でワルツを』と比較し、タカノが「アニメの色使いがかなり違う印象」と話すと、山村は「(本作が)グランプリを獲った東京アニメアワードフェスティバル2014の審査員として最初に観たとき、このバッドテイスト感は監督が正しく選択したものだとわかった。『実写をトレースしてアニメにするというやり方は一切していない。アニメーターが全部手書きで書いている』と(監督は)言っていましたよ」とフォルマン監督の言葉を併せて紹介した。
その後は、フォルマン監督が本作の制作にあたって参照したであろう過去のアニメ作品や裏ネタを自由に推測しながらトークを展開。山村はベティ・ブープなどが登場するカートゥーン映画を作ったフライシャー・スタジオの作品や、アブ・アイワークスの『バルーン・ランド(原題) / Balloon Land』、15世紀の画家ヒエロニムス・ボスや、作家F.ラブレーの挿絵画家で知られるフランソワ・デプレの名を挙げ「1930年代のアニメの狂気の感覚が本作にも通底しているし、ボスやデプレの現実を組み合わせながら虚構を作る感覚もある。ここ数年の長編アニメのなかでも一番のオススメ」と話すと、タカノは「現実をアニメが侵食する初音ミクに共感する人も受け入れられるのでは?」と続いていた。(取材/岸田智)
映画『コングレス未来学会議』は6月20日より新宿シネマカリテほかで公開