極限状態に置かれた兵士たちの狂気…塚本晋也監督『野火』予告編公開
映画『鉄男 TETSUO』『悪夢探偵』などで知られる塚本晋也監督の最新作『野火』の予告編が公開され、兵士たちが置かれた極限状態の一端が明らかになった。
同作は、大岡昇平による同名小説を実写化した戦争ドラマ。塚本監督が二十数年前から映画化を熱望していた念願の企画で、製作・監督・脚本・撮影・編集・主演を兼任。第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、野戦病院を追い出されてあてもなくさまよう日本軍の兵士・田村一等兵(塚本)の姿を追う。
公開された予告編が映し出すのは、ひたすらに撃ち殺されていく兵士たちや、美しい草原に転がる無数の遺体、日本兵の存在に恐怖の表情でさけび続ける現地人女性の姿など、むごたらしい戦場の現実。
画面をにらみつけるように「人肉まで食って苦労してきたんだ」と語る中村達也や、ほうけたような表情で銃剣を構えるリリー・フランキー、「じゃあどうする? 俺がおまえ殺して食うか? おまえが俺殺して食うか?」とさけぶ若手俳優の森優作など、実力派俳優陣による熱演が、戦場の狂気を浮き彫りにする。映像の最後には、燃える家屋を背景に狂ったように笑う兵士の姿が。長年の夢を実現した塚本監督の描く兵士たちの心象風景に胸が締め付けられる。(編集部・入倉功一)
映画『野火』は7月25日より渋谷・ユーロスペース、立川シネマシティほかにて公開