「ひつじのショーン」初期設定は彼女持ち&バイク乗りのリア充だった!初登場からテレビ、映画になるまで
『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』の公開を記念して監督・脚本を務めたリチャード・スターザックが来日し、中編映画『ウォレスとグルミット、危機一髪!』(1995)では脇役だったひつじのショーンがテレビシリーズになり、ついには映画化されるまでの20年にわたる過程を語った。
スターザック監督は、1983年にアードマン・アニメーションズに第1号の社員として入社したアニメーターで、テレビシリーズの開発にも携わった人物だ。「『ウォレスとグルミット、危機一髪!』でのショーンのシーンは6分程度でしたが、彼がとても人気のあるキャラクターだとわかりました。映画の後、商品化することを考えて、ショーンのリュックを作ったんです。そうしたらスパイス・ガールズの一人がそのリュックを背負った写真が雑誌に載って、すぐにリュックは売り切れました」とグッズから人気が沸騰した。
それからずっと「ショーン」で何かをやりたいと考えていたものの、皆それぞれ手掛けている作品で忙しくなかなか取り掛かることができず。そしてついに2007年に1話7分のテレビシリーズが誕生することになる。スターザック監督はパイロット版のエピソードを監督するよう頼まれたが、もらった脚本は現在の「ショーン」とは全く違った。
「ショーンにはガールフレンドがいました。ピンクの羊です。あと彼はバイクやキャッシュカードも持っていて、コンピューターも使えるし、映画館にも行きました。ただ出来上がり過ぎていて、物語が生まれる余地がなかったんです。というか全然ひつじらしくなくて、彼がひつじである必要がないんですけどね(笑)。なのでわたしが新しいものを考えてもいいかと聞いたらみんな賛成してくれました」。
そしてスターザック監督が作ったのが、牧場主、牧羊犬のビッツァー、ショーンからなるヒエラルキーだ。みんなを管理しているようで実はしていない牧場主、牧場主の仕事をしているがショーンのことも好きだから板挟みになっているビッツァー、囲いの中にいるもののアドベンチャーを求めているショーンという設定はたくさんの物語を生んだ。「彼らの関係はヒエラルキーであるけれど、同時に家族のようなものなんです。父、兄、弟っていうね。それがたくさんの家族の物語を生みました。それが成功した理由だと思います」と分析する。
そして「ショーン」生誕20周年となる今年、ついに映画版が公開されるが、スターザック監督はテレビ版のシリーズ1のときから映画化を考えていたという。「わたしたちはテレビシリーズでセリフをなしにすると決めたんですが、それがとても映画的でそれぞれが小さな映画のようでした。だからもっと発展すると思いました。この6年間、ショーンの映画を作りたいと思っていたんです。でも心配だったのは、普通テレビアニメは終了してから映画になること。そしてそれで終わる。わたしたちはそうなってほしくはなかった。なぜならショーンはどんどん人気になりましたから」。
しかし、映画化を諦め切れないスターザック監督は周囲を説得。「映画を作ることは終わりじゃないって伝えました。わたしはこれで終わらずもう1本映画を作りたいし、うまくいけばその次もね」。そして「ショーン」の映画化には多くの人々が資金を出すことに興味を示してくれたといい、フランスを拠点とするSTUDIOCANALとタッグを組むことになった。アードマンの映画としては初のハリウッドのスタジオ以外とのパートナーシップとなることについて「本当に低予算の作品なのですが、それはわたしたちに自由があるということです。外からのプレッシャーを受けることなく、アードマンらしい作品を僕たちが作りたいように作りました」と胸を張っていた。(編集部・市川遥)
『映画ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~』は7月4日より新宿ピカデリーほかにて全国公開