憲法9条を守り切れていない日本!沖縄の苦難をアメリカ人監督が代弁
現在公開中の映画『沖縄 うりずんの雨』のメガホンを取ったジャン・ユンカーマン監督がインタビューに応じ、現在沖縄が置かれる状況は、日本が憲法9条を守り切れていないことの象徴であるという見解を示した。
本作は、太平洋戦争における沖縄戦を体験した日本兵と米兵、沖縄で暮らす人々へのインタビューと、戦時中の映像が織り交ぜられ構成されたドキュメンタリーだ。日米どちらかの意見に偏ることのない構成について監督は、「兵士たちが悪いわけではなく、戦争を起こした政府に問題がある。体験者により事実が語られる中でいろいろな事柄が見えてくることが大切だと思った」と戦争の責任の所在について見解を明かした。現在の沖縄の置かれている状況については、「全国の米軍専用基地のうち約74%は沖縄に置かれるなど、沖縄県民の意思を無視して新しい基地建設がなされていると感じる」と今もなお沖縄に残留する米軍基地問題に懸念を示した。
現在日本では、沖縄の米軍基地新設も含め、憲法解釈に関するさまざまな問題提起がなされている。政府が憲法9条の解釈を変えて推し進める集団的自衛権行使容認については、先月国会周辺で行われた、約2万5,000人による反対デモ行進が記憶に新しい。
ユンカーマン監督の前作品『映画 日本国憲法』(2005)は、近年再上映されるなど、注目を浴びている。この作品の製作当時について監督は、「当初は、改憲は止められないという風潮だったため、改憲がどのような影響を及ぼすかに焦点を合わせて作ろうと企画していた。だが、製作開始後に世論に変化が見られ『日本の憲法を見直そう』という風潮が高まった」と振り返る。「そういった『憲法を変えたくない』という一般市民の意識は10年たった今も続いている。政府にはそれが見えていないのか強引に変えようとしているが」と国民の意思確認なしに進められる憲法改変について、難色を示した。
ズバリ、沖縄の米軍基地はなくすべきか? については、「アメリカは沖縄に基地を持つ権利も必要もない。明日なくすことはできないが、なくすためのロードマップを考えるべき。沖縄に米軍基地がなくても大丈夫な環境をどう作るか考えていかなければ」ときっぱり言い切る。「沖縄の状況は厳しいが、以前よりも憲法問題・基地移転問題への関心が全国的に高く、そういう意味では毎日少しずつ勝利し続けている」と前向きだ。秘策としては、「日米間はもちろん、東アジアの国々の人たちとの交流機会を増やすべき。軍事予算の一部を若者同士の交流費用に用いるのはどうか」というアメリカ人でありながら、長年沖縄の人たちと深く交流を持ってきたユンカーマン監督ならではのアイデアを聞くことができた。
「戦争は絶対に繰り返してはいけない」という強いメッセージをもつ本作は、若者も積極的に観ているという。平和主義を掲げる憲法の下にありながら、今もなお米軍基地が置かれている沖縄。沖縄で暮らす人々や戦争体験者が思いを語る言葉に、日本の未来を大きく左右する「憲法の在り方」と向き合うための手掛かりがあることは間違いない。(編集部・高橋典子)