塚本晋也、新作『野火』公開に感無量… 関係者たちも感極まり涙
塚本晋也監督が25日、渋谷のユーロスペースで行われた映画『野火』の初日舞台あいさつに来場し、感激の表情を見せた。この日はリリー・フランキー、森優作らキャストと、音楽の石川忠も登壇した。
第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、暑さと飢餓で極限状態に追い込まれた日本兵の姿を描き出した大岡昇平の同名小説を鬼才・塚本監督が映画化した本作。この日の劇場は立ち見が出る超満員。塚本監督は「ついにこの日が来ました。本当は最終的に大きな映画にしたかったんですが、どうしてもお金が集まらず。それでも3年前に(自主制作でもいいから)とにかく作るんだと思い、動き始めました。自主配給でしたから、手探りでやってきましたが、多くのスタッフ、キャストの熱い思いのおかげで、ようやくここまで来ました」と感無量の様子だった。
そんな塚本監督の情熱を支えた音楽の石川、そしてこの日の司会を務めた配給宣伝担当の映画ジャーナリスト・中山治美氏らも、感極まって涙ぐむなど、初日を迎えたことを喜ぶ登壇者たち。そんな関係者の情熱に、会場も万雷の拍手で労をねぎらった。
本当の戦場にいるような狂気の映像が繰り広げられる本作。リリーが「『野火』を観て、すごくグロかったという人がいますけど、僕はそうは思わない。現実の方が圧倒的にグロいですよ」と切り出すと、塚本監督も「10年前に戦争体験者の方々にお話を聞いたのですが、その現実の話の方がもっと恐ろしかった。この映画で若い人にいいトラウマを植え付けたい。本当に戦争に行くのは悪いトラウマですが、僕たちの若い頃は『はだしのゲン』や『野火』などを読んで、いい意味で戦争がトラウマになった。ドキュメンタリーでなく創作でも戦争の恐ろしさを伝えられるんだなと思っています」とコメントした。
なお、この日の舞台あいさつは、SNS投稿用のために一般客も撮影がOKだった。「俳優さんによっては写真はダメだという方もいらっしゃるんですが、リリーさんありがとうございます」と頭を下げる塚本監督に、リリーは「この映画が話題になるんだったら、下半身でも出しましょうか?」とジョーク交じりに提案。会場は大爆笑に包まれるなど、和やかなうちに舞台あいさつは幕を下ろした。(取材・文:壬生智裕)
映画『野火』は渋谷ユーロスペースほか全国公開