ジョン・ラセターに「気味悪い」と言われた!?ピクサー短編監督の製作秘話
ディズニー/ピクサーで新作を作る際にはトップへのプレゼンが必要となるが、常ににこやかなイメージがあるジョン・ラセターもダメ出しをする際には心を鬼にしているようだ。新作短編映画『南の島のラブソング』のジェームズ・フォード・マーフィ監督は、同作の制作時を振り返り、ラセターから「あまりに気味が悪いよ」というダメ出しがあったと明かした。
本作は、愛の歌を歌う熱帯の海に浮かぶ火山島・ウクと、その歌を聴く深海火山・レレの物語。セリフは全て歌になっており、オリジナル版のそれぞれの火山の声優はハワイアンシンガーのクアナ・トレス・カヘレとナプア・グレイグが担当している。
この映画の大きな課題の一つには、火山という性質上ほとんど動かない主人公たちでどのようにストーリーを展開させるかということがあった。そのためマーフィ監督を含めた『南の島のラブソング』チームは、「できるだけたくさんばかげたアイデアを考えてみよう。彼がどういうキャラクターで、どういうことができるか考えてみよう」という方針に至ったとのこと。
その結果、独りぼっちだったウクの元にメスのクジラが訪ねてきて、お互いにいい雰囲気になるものの、クジラに置いていかれる「孤独なウク」、島の周りで暮らす生き物たちのパートナーを見つけようとする「恋のキューピッドのウク」、もしも自分がイルカだったらなどさまざまな想像を繰り広げる「夢見るウク」の三つのバージョンを思い付いたという。
しかし、これらのアイデアをラセターに見せたとき、プレゼンの半分くらいでラセターは「ジム、主人公を愛すべきキャラクターにしてください」とコメント。続けて「キャラクターたちは大好きだよ。彼らはとても愛らしいと思う。でも、火山といちゃついているクジラというのは、あまりに気味が悪いよ」とバッサリ。ラセターからの言葉にマーフィ監督は、「失敗してしまった。完全に恥をかいてしまった」とへこんでしまったそう。しかし映画が完成した今では、この評価こそが本作では重要だったと振り返り、「完成した映画には、これらのアイデアの多くのものが出てくるからね」と笑顔を見せていた。(編集部・井本早紀)
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