二人一役!双子子役を起用する利点
ナチスドイツの手から逃れた8歳のユダヤ人少年が、たった一人で森に潜み、食べ物を求めて農村を渡り歩きながら3年もの月日を生き抜いた実話を基にしたドイツ・フランス合作映画『ふたつの名前を持つ少年』では、アンジェイ・トカチ&カミル・トカチという双子の兄弟がスルリックを二人一役で演じている。労働時間が制限されている子供を主人公として描く場合、二人一役で演じられる双子を起用することは大きな利点になるといい、プロデューサーのスーシャ・クーシェは「2人がいなければ(本作は)製作できませんでした」と断言する。
二人一役を務めた子役といえば、人気テレビドラマ「フルハウス」のミシェル役メアリー=ケイト・オルセン&アシュレイ・オルセンが有名。映画『ハリー・ポッター』シリーズでは1日4時間しか撮影に参加できない子役たちに代わり、セリフのないシーンでは低身長の大人の俳優たちがかつらをつけて彼らの代役を務める必要があるなど、制限の中で製作する難しさがあった。
『ふたつの名前を持つ少年』でも当初、スルリック役に選んだアンジェイが双子とは知らず、「どのように撮影するか頭を悩ませました」と明かしたクーシェ。どのシーンにもスルリックが登場する映画だが、ドイツでは子役がセットに居られるのは5時間、撮影は3時間までと定められていたからだ。しかし、アンジェイにはそっくりな双子の兄弟・カミルがいたため全シーンの半分を彼が演じることが可能になり、クーシェは本作の製作を「双子が救ってくれた」と述懐している。
自身も双子だというペペ・ダンカート監督も「2人で演じているとは誰も思いません。メイクと元来のそっくりさで同一人物に見えるのです」とコメント。特別動画では愛らしい笑顔が印象的なアンジェイとカミルの姿、そして二人でスルリックに成り切るさまを見ることができ、彼ら双子が本作で果たした役割の大きさを感じさせる。(編集部・市川遥)
映画『ふたつの名前を持つ少年』は8月15日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開