サルマ・ハエックが製作/声優を務めたオスカー候補のアニメ作品とは?
メキシコ出身の女優サルマ・ハエックが、製作兼声優を務めた話題のアニメ『ハリール・ジブラーンズ・ザ・プロフェット(原題) / Kahlil Gibran’s The Prophet』について語った。
本作は、母親(サルマ)も手に負えない少女アルミトラ(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は、政治犯として自宅軟禁されていた詩人ムスタファ(リーアム・ニーソン)と友情関係を結ぶが、ある日アルミトラは政府がムスタファに対して陰謀を企てていることを知り、彼を助けるため全てをささげようと動きだすというストーリー。レバノン生まれの詩人ハリール・ジブラーンの詩集「預言者 The Prophet」を基に、ビル・プリンプトンなど9人のアーティストが、九つのセグメントを手掛けた作品。
ジブラーンの詩集についてサルマは「幼少の頃、わたしの祖父のベッドの横にハリールの顔が描かれた書物のカバーがあったの。その後、わたしが6歳のときに祖父は亡くなった。祖父とはとても親密な関係だったから、子供心に祖父の人生への考え方などを聞けなかったのは、とても不公平だと思った。そして18歳のときにようやくこの詩集『預言者 The Prophet』を読んだの。そこには愛、友情、罪と罰などさまざまなことが記されていて、それはまるで亡くなった祖父がわたしにアドバイスしてくれているようだった」と祖父との思い出から製作に至ったことを明かした。
アニメとして描いたことについて「今作は『自由』を描いている。でも、うぬぼれた概念や、説教くさい概念を語るような作品にはしたくなかった。あえて陽気な作品にして、わたしが子供の頃に観ていたアニメをほうふつさせるような(明るいイメージの)オープニングシーンも描かれているの。さらに手描きによるアニメなので、観客には映像を鑑賞しながら『自由』を感じてほしいわ」と語った。
製作に時間がかかったことについて「今作はあえて大スタジオに持ち込まずに製作したの。それは詩集の哲学的な要素やこのアニメのクリエイションの過程が、スタジオ作品にはふさわしくなかったから。それに今作は多くの国から製作費を集め、多くの国からアーティストが参加し、全く国を隔てていない作品でもあったから。彼らアーティストの宗教は違い、年齢も離れていたことで、一つのシーンをさまざまな観点で捉えながら製作できた」と利点を明かした。
映画は、子供の視点で描いていながらも、芸術性とメッセージ性の高いアニメの傑作だ。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro hosoki)