狂気の報道カメラマンを怪演したギレンホール、ゴシップを追うパパラッチに苦言
犯罪事件、事故現場に駆け付けて被害者にカメラを向ける、報道スクープ専門のパパラッチ、通称ナイトクローラーの日常を描いた衝撃作『ナイトクローラー』。本作で、刺激的な映像を求めるあまりに常軌を逸していく主人公を怪演したジェイク・ギレンホールが、インタビューに応じた。
「夜の世界」に生きる主人公ルイスを演じるにあたり、12キロの減量に臨み驚異的な変貌を遂げたジェイク。そこまで彼を奮い立たせた理由は、監督のダン・ギルロイが手掛けた脚本の並外れたクオリティーにある。ダンは本作で、第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされている。ジェイクは「初めて脚本を読んだときはこんなの今まで見たことがないと驚いたよ。それはルイスのセリフについても同じで、ルイスには何かを吸収するにしても、人を操るにしても驚異的なスピードがあるし、彼のダークなユーモアのセンスを面白いと思ったんだ」と興奮しながら脚本、キャラクターの魅力を明かす。
いつもはパパラッチされる側にあり、ハリウッドスターにとってそれは厄介な宿命でもあるがジェイクは「パパラッチとナイトクローラーは全く比べものにならないよ」とピシャリ。さらに、「ナイトクローラーたちは生死に関わる事象を撮るわけだけど、パパラッチはセレブのバカバカしさを撮っているのであって、僕に言わせるとそれをなりわいとすること自体がバカバカしいと思う。その考えは、この映画に出てからも変わらないよ」とゴシップを追うパパラッチに対して辛らつな言葉を放った。
テレビ局の女性ディレクター・ニーナがルイスに告げる“特ダネ”の条件は、「望ましいのは被害者が郊外に住む白人の富裕層で、犯人はマイノリティーや貧困層」。ルイスしかり、ニーナしかり、目を覆いたくなるような殺人事件に対しても顔色一つ変えることなく、事件を“ストーリー”と呼ぶのが印象的だ。職業を全うするためならねつ造も仕方がないことなのか? そんな、あらゆるメディアに精通するテーマに対して、ジェイクはこう分析する。「我々を今取り巻く文化、社会というのは利便性を追求することに躍起になっていて、他人のことなんかお構いなしに、何でもなるべく楽にアクセスできるような“コンビニエンス”なものばかりがよしとされている。その中で仕事にまい進するということもまた、再定義されてしまっていて、ルイスはそのメタファーなんじゃないかと思う」
発砲事件が起きれば被害者宅に不法侵入し、遺体を冷蔵庫の生々しい銃弾跡の横に移動。横転事故が起きた際には、血だらけの遺体を車の下から引きずり出して撮影する。もはや完全に倫理観が失われたルイスだが、その果てに彼が一線を超える結末をどう受け止めるのか。現代人に巣食う闇を突き付ける野心作となっている。(取材・文:編集部 石井百合子)
映画『ナイトクローラー』は8月22日よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて全国公開