人生が崩壊したと感じた…リース・ウィザースプーン、渾身の一作に重ねた過去
ベストセラー作家、シェリル・ストレイドの自叙伝を映画化した『わたしに会うまでの1600キロ』でアカデミー賞主演女優賞候補になったリース・ウィザースプーン。題材にほれ込み、自ら製作も務めた彼女が、作品に懸ける思いを語った。
【動画】リースの熱演に注目!『わたしに会うまでの1600キロ』予告編
本作は、『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン=マルク・ヴァレ監督による感動の人間ドラマ。最愛の母親を亡くし夫とは離婚。人生のどん底にいたシェリルが、米国西海岸を歩いて縦断する過酷な旅を通して自分を取り戻す。リース入魂の演技を堪能できる、心が洗われる一本だ。「喪失や悲しみを描いた奥深い物語だと思ったの。この旅に出なければ、きっと悲嘆して麻薬やセックスにおぼれ、自分を見失う。シェリルはそこから抜け出すと決めるのよ」。
撮影中、肉体的に最もつらかったのは、足の爪がはがれ、脱いだ靴を山頂から落としてしまうシーン。そして精神的には、母親を失う場面だった。「わたしの母は20歳のとき、50歳だった母親を亡くしたの。そのときにどう感じたのか話してもらったわ。子供は親の感情を無意識に受け継ぐものだと思う。撮影では、母の思いがわたしの中からあふれ出てきた。この映画で母は、わたしが彼女のことをどれほど素晴らしい母親だと思っているかわかってくれたと思う」と語るリース。本作では、母親役のローラ・ダーンもアカデミー賞助演女優賞候補に選ばれた。
劇中リースは、シェリルが見ず知らずの男とセックスする場面にも裸で挑戦。「15歳の娘に説明したら、『ママ、それってヘンよ~』って言っていたわ」と明かしつつ、「でも、シェリルは自分の全てを語ったんだから、怖くてもやらないといけなかったの。娘はわたしのことをとても誇りに思ってくれているわ」と笑顔を見せる。
そんなリースもシェリル同様、人生が全て崩壊したように感じたことがあった。「キッチンの床に横たわって、ものすごく泣いたわ。誰でも、自分を弱く感じたり、取り乱したりすることがあるものよ。でも、ある時点で『もうこういうふうに感じたくない』って思った。誰も助けになんて来ない。自分で自分を救わないといけないことに気づいたの」。
美しく厳しい自然の中で、母が愛してくれた自分を取り戻していくシェリル。終盤で彼女が見せるすがすがしい表情が実に印象的だ。「映画は何もないところで終わる。そこがすごく好きよ。彼女には、お金も男も車も仕事もないし、母親も父親もいない。でも、ハッピーなの。彼女はもう大丈夫なのよ」。(吉川優子)
映画『わたしに会うまでの1600キロ』は8月28日より全国公開