異例のロングラン!女子高生が原発問題を追う!『セシウムと少女』
コラム
女子高生が原発問題を追う映画『セシウムと少女』が4月末から現在まで異例のロングラン上映を続けている。女子高生の目を通して原発問題を鋭く問い掛けながらも、現代風にアレンジされた北原白秋の歌や色鮮やかなアニメーションでテンポよく展開する。
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本作は、17歳の女子高校生ミミが、落雷をきっかけに出会った7人の神々と共に、ミミのおばあさん静の大切な九官鳥を捜す手掛かりを求めて1940年代にタイムスリップする姿を追い掛けるというファンタジックな要素も漂う内容だ。タイムスリップした先で出会うのは、少女時代から静がひそかに思いを寄せていた北原白秋。40年代の東京を見物しながら静の北原白秋への思いの行く末を見守ったミミは、静の青春時代を隣で追体験したことで、「わたしの青春はどうなるの」と自分のこれからに目を向ける。東日本大震災の2日後から舌に痛みが出ていたミミは、ずっと不安に感じていた放射能問題を調べる旅に出る。
メガホンを取ったのは、『日本のいちばん長い日』(1967)などの故岡本喜八監督に大学在学時から師事していた才谷遼監督。主人公のミミを、本作で映画初主演を果たした白波瀬海来(しらはせかいら)がみずみずしく演じた。一か月にわたるオーデションを経て、満場一致で彼女に決定したという。神々を演じるキャストには、無名塾の長森雅人やワハハ本舗のなんきんなどベテラン俳優が脇を固める。
作中で居酒屋にてたびたび開かれる会議では、ミミが原発問題について率直に疑問を呈し、原発政策や報道のあり方についての神々の鋭い意見が飛び交う。福島原発事故以来舌に痛みを感じるというミミの不安を案じ、神々はミミに優しく寄り添いながら皆で原発問題を考えていく。ミミと神々は、東京の森や水脈など自然環境の変化をたどりながら、放射性セシウム量を測定する旅に出る。
本作は、女子高校生ミミの目を通して日本の原発問題を追っているが、ミミと神々の姿が何よりも訴えかけてくるのは、自ら問題に取り組むという強い意志だ。「あれだけの大事件が起きたのに国は原発を推進するの? みんな忘れちゃったんだ。まだ、何も終わっていないのに」と話し合い、手分けをしてセシウム量の調査を進めるミミたち。その純粋な姿は、わたしたちが原発問題について再び考え直すきっかけになる。(編集部・高橋典子)