中谷美紀、40歳を目前に心境の変化 20代は女優業に迷いも
女優としての振り幅をますます広げる中谷美紀(39)が、映画『繕い裁つ人』で演じた仕立屋の2代目店主・市江を振り返りながら、20代、30代の迷いと決断、そして40歳を目前にした現在の心境などを語った。
職人気質の市江を演じるにあたって、感情表現が最も難しかったという中谷。「市江は自分の心の中で抱いた思いを、心の中で完結してしまうタイプ。喜怒哀楽の感情は持っているけれど、それが表に出てこない。だから微妙な心のヒダみたいなものを表現するのに苦労した」と述懐する。だが市江は仕事から離れると、今度は極端なほどに“ほころび”を見せる。
「気晴らしにチーズケーキをホールごと抱えて食べたり、家事が全くできなかったり、パジャマのボタンを掛け違えていたり、仕事以外の市江は本当にダメ人間」と苦笑いする中谷。オンオフのギャップが激しい市江だが、素顔の中谷はどうやらオフの市江に共通する部分が多いようだ。「だから外に出たときぐらいは凛(りん)とした姿でいようと思って、インナーマッスルは鍛えています」とニッコリ。
さらに、市江がケーキをドカ食いするシーンも「すごく気持ちがわかる」と大いに共感。「わたしも撮影の仕事などで100人近くの人に囲まれていると、たまには一人になりたいと思うときがあります。そのようなときは、気配を消して一人でおそば屋さんに行って、心の赴くままに3人前をペロリと平らげたり、カウンターのお店に行って隣のお客様の話に耳を傾けたり」と意外な一面を披露した。
そんな中谷も40歳を目前にして、心境の変化があったという。「20代の頃はアルバイト感覚で、わたしには女優よりもっと適職があると思っていた。まさか、こんなに長く続けるとは思いませんでした」と迷いの時期だったことを告白。ところが30代になると「どこで腹をくくったのか覚えていませんが、女優として自分のやりたいことと、やるべきことのバランスが少しずつ取れるようになってきた」といい、「今は40代が楽しみですね」と目を輝かせる。
そして、今後は女優業の傍ら「陶芸・漆器・織物など日本の伝統工芸に携わる友人知人の丁寧な仕事を、国内外の方々に伝えていきたい」と意欲を見せる中谷は、「市江のようにコツコツとものづくりに励む方々は日本中にいらっしゃいます。わたしができることなどほんのわずかですが、少しでもお役に立てたらうれしいです。そのためにも人の心を深く探求し、お客様の心に響く作品づくりを目指して、これまで以上に励みます」と決意表明。社会貢献活動が加わって、さらに深みを増した女優・中谷美紀との再会に期待したい。(取材・文:坂田正樹)
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【ヘアメイク】下田英里、【スタイリスト】岡部美穂、【カメラマン】宅間國博