モフセン・マフマルバフ監督、ベネチア映画祭でロベール・ブレッソン賞を受賞
映画『カンダハール』や『パンと植木鉢』などのイランを代表する監督モフセン・マフマルバフが、現地時間12日に閉幕した第72回ベネチア国際映画祭でロベール・ブレッソン賞を受賞した。マフマルバフ監督の公式サイトで報告されている。
ロベール・ブレッソン賞は、人生における精神的な意味を探求するために、困難な道を歩んでいる監督の功労をたたえて与えられる賞。1999年に設立され、これまでマノエル・ド・オリヴェイラ、アレクサンドル・ソクーロフ、ケン・ローチ、ヴィム・ヴェンダースらに授与されてきた。
この賞を、マフマルバフ監督はウクライナの映画監督オレグ・センツォフにささげるとコメントしている。センツォフ監督はクリミア自治共和国のロシアへの併合に反対を唱えているとして、昨年ロシア連邦保安庁に逮捕され、現在も投獄されたままだ。
受賞コメントで「39歳の映画監督が20年の実刑を下されるとは、個々への罰として最も残忍だ。このことは、必ずや、より大きな刑罰と報復を国中に招くであろう」とマフマルバフ監督はセンツォフ監督への不当な扱いに抗議の意を述べ、「センツォフ監督は、刑務所で年月を数え続けるのではなく、新しい映画を作るべきだ」と訴えている。
マフマルバフ監督は26歳でデビューして以来、自国イランのほかアフガニスタン、パキスタン、イスラエルなどで映画を制作。タリバン政権により打ち壊されたアフガニスタンを復興させようと人権活動に携わるが、イランでの作品上映を政府に禁じられ、検閲の圧力に抗議して2005年より亡命生活を送っている。現在はロンドンとパリを拠点に監督活動を続けている。
昨年のベネチア国際映画祭をはじめ各国の映画祭で絶賛されたマフマルバフ監督の最新作で、独裁者とその孫のクーデターからの逃避行を描いた映画『独裁者と小さな孫』は12月12日より日本で公開される。(鯨岡孝子)