園子温監督が夫婦で作った『ひそひそ星』がトロントでNETPAC賞受賞!
第40回トロント国際映画祭
現地時間20日、第40回トロント国際映画祭授賞式が開催され、園子温監督の新作SF『ひそひそ星』がNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)に輝いた。NETPAC(The Network for the Promotion of Asian Cinem)賞は最も注目すべきアジア映画に与えられる賞。園監督は『希望の国』で第37回のNETPAC賞、『地獄でなぜ悪い』で第38回のミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞しており、本映画祭で賞を獲得するのはこれが3度目となる。
『ひそひそ星』は、宇宙宅配をするアンドロイドの鈴木洋子がさまざまな星に降り立ち、かつて人々でにぎわった街や海辺に荷物を届けていくさまをモノクロの映像で描いたSF作品。2014年に園監督自ら設立したシオンプロダクションの第1回作品で、監督の妻で女優の神楽坂恵が洋子役を務めているほかスタッフとしても参加し、夫婦で作り上げた作品だ。2014年10月に東日本大震災による原発事故の傷痕が色濃く残る福島県の富岡町・南相馬・浪江町で撮影され、14日のトロントでの上映がワールドプレミアとなった。
審査員は「言い表せない深い悲しみを、本物の要素とローファイなSFを組み合わせて表現しようとする、詩的で、感動的で、勇敢な試み」と同作の選考理由を説明。園監督と神楽坂はすでに帰国しており、授賞式では「トロントの観客の皆さんのリアクションは素晴らしかったです。本当に僕の映画を理解してくれていると感じました(園監督)」「NETPAC賞を頂けて本当にうれしく思っています(神楽坂)」というコメントが代読された。
最高賞にあたる観客賞(プレゼンテーション部門)を受賞したのは、『FRANK -フランク-』のレナード・エイブラハムソン監督が手掛けた『ルーム(原題) / Room』。エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を原作に、誘拐され監禁された母親(ブリー・ラーソン)とそこで生まれ育った息子(ジェイコブ・トレンブレイ)がその部屋を出て、外の世界に適応しようともがくさまを描く。幼いジェイコブの演技が素晴らしく、早くもアカデミー賞男優賞候補の呼び声高い。
オスカー前哨戦ともいわれるトロント映画祭。昨年観客賞(プレゼンテーション部門)に輝いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』はオスカー8部門ノミネートを果たしたほか、過去の受賞作は『それでも夜は明ける』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』などかなりの確率でオスカー作品賞を獲得しており、『ルーム(原題)』の動向も注目される。
三池崇史監督の『極道大戦争』も出品されていたミッドナイト・マッドネス部門の観客賞は、イリヤ・ナイシュラー監督のロシア・アメリカ合作アクション『ハードコア(原題)Hardcore』が受賞した。(編集部・市川遥)