中村勘九郎、亡き父・勘三郎さんから褒められたスライディング
21日、浅草公会堂で「第8回したまちコメディ映画祭in台東」のプログラムの一環として、『シネマ歌舞伎 野田版 鼠小僧』のデジタル上映会が行われ、6代目中村勘九郎と舞台の作・演出を務めた野田秀樹らが出席。勘九郎は劇中、歌舞伎の花道を疾走する場面があったと振り返り、「父(18代目中村勘三郎)から 『花道を全力で走ってスライディングしたのはお前が初めてだ』と褒められました」と笑みを浮かべた。
歌舞伎の魅力をスクリーンで楽しむことを目的としたシネマ歌舞伎の第1弾として2005年に上映された本作は、2012年に逝去した勘三郎さんの主演作。「鼠小僧」を題材に2003年に上演され、勘九郎にとっても思い出の父子共演作だ。この日は、老舗扇店の文扇堂の主人・荒井修氏、本映画祭総合プロデューサーのいとうせいこうも出席した。
野田は「歌舞伎役者さんは忙しいので大阪まで追い掛けていって稽古をやった。笑いの絶えない稽古場だった」としみじみ。勘九郎も「父が本当に楽しそうに笑い転げていた。(野田さんが)本当に細かく芝居をつけてくれて、父もとても感謝していた」と当時の稽古場の様子を語った。荒井氏も「あれだけ役者が楽しくノリノリでやったら、お客さんも楽しくないわけがなかった」と仲良く思い出話に花を咲かせる。
また勘九郎は、本作は自身の子供たちに今も人気だといい、「うちの次男(哲之くん)が大変。自分のこと鼠小僧だと思い込んでいるんです。『のりー』って言うと『のりじゃない! 鼠小僧だ!』って言うんですよ。子供にとってやっぱり鼠小僧はヒーローなんでしょうね」とうれしそうに話していた。(取材・文:名鹿祥史)