エミー賞を振り返る!史上初が連発、アフリカ系女優の活躍やファンタジーに異例の脚光
アメリカ現地時間9月20日、ロサンゼルスのダウンタウンにあるマイクロソフト・シアターで、テレビ界のアカデミー賞といわれる第67回エミー賞授賞式が華やかに開催された。アメリカのテレビ界は、新たな「黄金時代」を迎えたといわれるようになって久しいが、今年も質の高い候補作が目白押し。選ぶ方もさぞ大変だったに違いない。
今年の司会は、「サタデー・ナイト・ライブ」で有名になり、テレビドラマ「ブルックリン・ナイン・ナイン(原題) / Brooklyn Nine-Nine」に出演中のコメディアン、アンディ・サムバーグ。テレビ番組を見ていないため、友人との話についていけない男が、1年こもってすべての番組を見るというオープニングのミュージカルが最高で、テンポのいい進行をみせた。
「ゲーム・オブ・スローンズ」がエミー賞史上最多受賞12部門
ドラマシリーズ部門の受賞結果だが、24と最多ノミネーションだったケーブル局HBOの大人気のファンタジー「ゲーム・オブ・スローンズ」が、作品賞や監督賞、助演男優賞など12部門で受賞。「ザ・ホワイトハウス」の記録を破ってエミー賞史上最多受賞作となった。助演男優のピーター・ディンクレイジは、5度目のノミネーションで4年ぶり2度目の受賞となった。
主演男優賞は、「MAD MEN マッドメン」で7度も候補になりながら無冠だったジョン・ハムが、8度目にして、ついに初受賞。同番組は5月にすでに放映が終わっており、最後のチャンスだっただけに、大きなスタンディング・オベーションに。ハムもとてもうれしそうで、舞台に上がるとき、階段を使わず腹ばいになってよじ登り、笑わせた。
ヴィオラ・デイヴィス、エミー賞史上初の快挙
主演女優賞は、「殺人を無罪にする方法」で、敏腕弁護士役に扮するヴィオラ・デイヴィスが初受賞。アフリカ系アメリカ人がドラマシリーズ部門の主演女優賞を受賞するのはエミー賞史上初のことで、まさに歴史が作られた瞬間だった。「有色人種の女性と、それ以外の人々を隔てている唯一のものは、機会だけ。ない役どころでエミー賞をとることはどうしてもできない」と感動的なスピーチで沸かせた。
デイヴィスのほか、Netflixの「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」でドラマシリーズ助演女優賞を受賞したウゾ・アドゥーバと、「アメリカン・クライム(原題) / American Crime」でミニシリーズ / テレビムービー部門助演女優賞を受賞したレジーナ・キングもアフリカ系アメリカ人女優で、今年はアフリカ系アメリカ人女優の活躍が目立った。
「オリーヴ・キットリッジ」6部門で受賞!
ミニシリーズ / テレビムービー部門も、HBOの「オリーヴ・キットリッジ(原題)/ Olive Kitteridge」が制覇。中学校の女性教師と夫の関係を25年に渡って描く4時間ドラマ。フランシス・マクドーマンドが主演女優賞、リチャード・ジェンキンスが主演男優賞、ビル・マーレイが助演男優賞、リサ・チョロデンコが監督賞と6部門で受賞。ちなみに、ジェンキンスに賞を渡したのは、シックな黒のドレス姿が素敵なレディー・ガガだった。
コメディシリーズ部門もHBOの政治コメディ「ヴィープ(原題) / Veep」が作品賞、主演女優、助演男優など5部門で受賞。女性大統領役のジュリア・ルイス=ドレイファスは4年連続受賞という快挙。11部門でノミネートされていたアマゾンのオリジナル作品「トランスパレント(原題) / Transparent」は、5部門で受賞。トランスジェンダーの父親を演じて主演男優賞を受賞したベテランのジェフリー・タンバーは、「トランスジェンダーのコミュニティーに私の演技と、この賞を捧げたい」というスピーチをして、大きな拍手を受けた。
SFやファンタジーといったジャンルものはなかなか主要部門を受賞できないというジンクスを破り、今年は、「ゲーム・オブ・スローンズ」が記録を打ち立て、アフリカ系アメリカ人女優が大活躍したり、ついにジョン・ハムが受賞といった、感動的でワクワクさせられるエミー賞受賞式だった。(取材・文:吉川優子)
海外ドラマ専門チャンネル AXN 第67回エミー賞 授賞式 字幕版 9月27日(日)18:00~21:00