大根仁監督「自分には才能がない」信頼とお任せで生むヒット
「自分には才能がない」と語るのは、人気漫画を実写化した映画『バクマン。』でメガホンを取った大根仁監督。しかし彼は、これまでに『モテキ』やテレビドラマ「まほろ駅前番外地」などのヒット作を生み出してきた。大根監督は自身の演出術について、「人の才能を組み合わせるのが得意なんですよ」と説明する。
「何でもできるぜ、俺。なんて思ったことはないです。何にもできないからいろんな人に頼んでいるんです」と話す大根監督は、『バクマン。』でもその姿勢は変わらなかった。VFXやオープニングシーンなどでは、ある程度の内容は決めるものの、それぞれの専門分野のスタッフに演出を任せたという。長いこと一緒にやってきた信頼関係のあるスタッフはもちろん、初めてタッグを組んだスタッフにも同じように任せたそう。監督は「自分の専門分野ではないですしね」と笑う。
さらに大根監督作品の特徴は、ほかの映画スタッフにもその考えが適用されていることだ。「『監督の考えることは絶対』みたいなことは絶対にないので。スタッフが気軽に作品に参加できた方がいいじゃないですか」と言う大根監督は、ラストシーンなど重要なシーンでもスタッフたちのアイデアを積極的に取り入れた。
そんな監督は得意なジャンルは「深夜の30分のどうでもいい感じの話やくたびれたおっさんが登場する作品くらい」。しかし、今回の『バクマン。』の主人公は男子高校生。得意なジャンルとは正反対だ。「大変でしたね。若い子なんて久々だったから、感覚を忘れていました」と振り返る大根監督。また年齢によるズレが作品に出ないよう、「自分たちのノリで演じてほしい」とキャストたちに委ねたとのこと。
そして大根監督が頼るのは、映画のスタッフやキャストだけではない。今回主人公たちが漫画を描いている姿を、プロジェクションマッピングを活用した演出方法にしたのは、知り合いの漫画家たちの影響があるという。「やっている作業は地味だけど、頭の中はすごいんだ。物語の中に入って、紙の上を駆けずり回っているんだ」。そう話す漫画家たちの言葉から、漫画のコマの上でペンを持って戦う漫画家の映像のアイデアが生まれた。そのほかにも以前ある放送作家から聞いたという、忙しい時にトイレで用を足した後に倒れたというエピソードを今作に持ってくるなど、人との会話が作品に影響を与えているよう。人との絆が大根監督の作品を作り上げている。(編集部・井本早紀)
映画『バクマン。』は全国東宝系で公開中