日本酒ドキュメンタリーが熱い!世界に向けて酒業界の起爆剤となるか?
第28回東京国際映画祭
米国・ロサンゼルス在住の小西未来監督が日本酒の魅力に迫ったドキュメンタリー映画『KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE』が、第28回東京国際映画祭パノラマ部門で上映される。同作はクラウドファンディングで製作資金の一部を集め、目標の330万円を上回る344万8,000円を調達。9月に第63回サンセバスチャン国際映画祭でのワールドプレミアを終え、今回が待望のアジアプレミアとなる。
同作は日本初の英国人杜氏(酒造りの最高責任者で蔵人を監督する人物)、米国人の日本酒伝道師、そしていち早く日本酒の海外展開を仕掛けてきた、株式会社南部美人の代表取締役社長・久慈浩介氏に密着。アウトサイダーの視点から酒業界の今、そして酒に狂わされた彼らの人生を見つめる。小西監督は「日本酒の知識がなく、外国人に聞かれるたびに『そろそろ知らなきゃマズいだろ』と危機感を感じていた。そんな自分でも彼らの生活を追えば、日本酒の魅力に気付くのではないか」と製作の動機を語る。
撮影は米国、英国、久慈氏の住む岩手県二戸市、英国人杜氏が務める京都・久美浜で実施。それは小西監督にとって、酒のみならず日本再発見の旅となった。小西監督は「東京育ちで、ずっと米国で映画作りがしたいと日本にいる時から海外にしか目を向けてこなかった。それが今回、二戸や久美浜を初めて訪れ、人に触れ、土地のご飯を食し、日本ってこんなに奥深いところなんだと今更ながら気付きました」と語る。
サンセバスチャンで初めて作品を見た久慈氏は「日本酒のドキュメンタリーは製造に特化した作品が多いけど、人に寄り添ったヒューマンドラマに仕上がっており、こういう仕上がりになるとは想像していませんでした。酒に懸ける僕たちの熱意や思いを汲み取って下さったと思います」とコメント。さらに同地でも南部美人を観客たちに振る舞い、プロモーションに勤しんでいた。
本作のほか日系アメリカ人のエリック・シライ監督が創業145年の吉田酒造店(石川県)に密着した『ザ・バース・オブ・サケ(原題) / The Birth of Sake』、能登の酒造りにスポットを当てた『一献の系譜』と3本の日本酒ドキュメンタリーが今年、誕生した。日本酒は国内消費の落ち込みに伴い蔵元も減少、生き残りには輸出が大きな鍵となっている。国内外で上映される3作が酒業界の起爆剤となるか注目だ。(取材:中山治美)
第28回東京国際映画祭は10月22日~31日、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどで開催
映画『KAMPAI! FOR THE LOVE OF SAKE』は2016年春公開予定
映画『一献の系譜』は新宿武蔵野館ほか全国順次公開中