「ガンダム」富野由悠季、手書きアニメへのこだわり語る「遺産になるものを」
第28回東京国際映画祭
23日、現在開催中の第28回東京国際映画祭の特集上映「ガンダムとその世界」第1弾として、「ガンダム Gのレコンギスタ」が新宿ピカデリーで上映され、総監督・脚本を務めた富野由悠季と、ガンダムファンを代表してメディアテクノロジストで筑波大学助教授の落合陽一氏が登壇した。
富野監督は「今日は映画祭とかこういう場所に絶対連れて来てはいけない人を連れて来ました。『映像の時代は終わったんだよ』とか平気で言っている人です」と少々辛口なコメントで落合氏を紹介。その言葉に照れ笑いを浮かべた落合氏は「こんななりですけど、大学の助教授です。コンピューターを駆使して不思議な表現を作る人です。人類をどうやってコンピューターを使って覚醒させるかばかりを考えています」と自己紹介。また、「とんでもないガンダムファンです」と明かし、「ここにいることが感無量。14歳の夢がかないました」としみじみ。
そんな二人のトークでは、富野監督の手書きアニメに対するこだわりが話題に。「しょうがないからやっているという捨て台詞もあります」と切り出した富野監督は、その一方で、「20世紀に作り上げた文化というものがあるから、遺産になるようなものを作っておきたいという気持ちがあるんです」と語る。
落合氏は、そんな富野監督の姿勢に共感する部分があるといい、「僕は手書きアニメとか、むしろ大好きなんですよ。世の中が全てCGに行くなら手書きアニメってパンクな存在じゃないですか。初代ガンダムのロボットの動きのほうが、人間の感覚的にCGのガンダムより、ロボットよりも、不思議とくるものがあるんです」とエールを送った。
また、「手書きアニメのほうがレアに見えるっていうのは、我々の周りでも意見として出始めています」という富野監督は、「やはりこの文化は残していきたい。そのためにこの作品(『Gのレコンギスタ』)でやったことというのは間違いではないと思っています。死ぬまでに手書きのアニメをもう少し何とか形にしていきたい」と力強く発言。そんな富野監督に落合氏は「長生きしてほしい」と声を掛けると「コンピューターで何かを代替して作っていくにしても、まずは先人の遺産を見ないといけないんです。富野監督に、今ここでベストな手書きアニメを作っといてもらわないと、われわれはコンピューターを使って何をサンプリングしていいかわからなくなる。“富野エンジン”をどうやって作るかが、俺の課題です」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)
第28回東京国際映画祭は31日まで六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿ほかにて開催中