伴侶が見つけられなければ、動物にさせられる映画とは?
ニューヨーク映画祭(53rd N.Y.F.F.)で上映された今年のカンヌ国際映画祭審査員賞受賞作品『ザ・ロブスター(原題) / The Lobster』について、ヨルゴス・ランティモス監督が語った。
本作は、家庭を持ち子孫を残すことが義務の近未来を舞台に、シングルの男女が古びたホテルに集められ、45日以内に伴侶を見つけられなければ動物の姿に変えられてしまうというストーリー。コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーなど実力派俳優が出演している。
本作の企画について「僕の3作品を手掛けた脚本家エフティミス(・フィリップ)とは、作品を撮り終えた編集段階の時から、(次回作のために)それぞれお互いが今興味を持っていることを挙げ、それら題材のテーマ、条件、状況を含めて話し合う。本作ではまず人間関係と、人々が成功というプレッシャーの中でいかに生きているか、さらに他の人が自分(主人公)をどのように見ているか、そして自分のすべきことの中で、どのくらい自分にプレッシャーをかけているのかなどを描きたかった。ただ、僕もエフティミスも、映画の中で現実を観客に提供することにはあまり興味がなく、いつも特別なルールのある世界を僕らは構成し、そんな極端な状況を通して掲げたテーマを探索している」と説明した。
ホテル内で伴侶を探す人たちと、その生き方に反して森の中に住む“ローナー”(孤独者)たちについて「まず、ホテルのアイデアが思い浮かんだ。それから、そのホテル内での多くのルールを考え、次に限られた期間での伴侶探し、もしそれが出来なかったらどうなるかも考えた。だが、もし伴侶が見つからなくてもこの世界から抹殺せずに、ポジティブなイメージを残したくて動物になる設定にした。さらに、このホテルの世界を考えついた時に、当然、その生き方に反する人(ローナー)もいると思った」と明かした。
国際的な俳優たちとのタッグについて「今作にはアイルランド人、英国人、アメリカ人、フランス人、ギリシア人などが参加した。僕にとっても初の英語作品を手掛けられたことは良い機会だった。個人的に自分が働きたいと思った俳優たちと仕事ができた。正直、撮影開始当初はナーバスだったが、参加した俳優の誰もがこの脚本をよく理解してくれていた」とスムーズに製作できたことに感謝した。
映画は、極端な世界に生きる人々の姿が滑稽で、時には恐怖にも感じるオリジナル性の高い作品。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)