ジョン・ウー監督、『君よ憤怒の河を渉れ』再映画化の始動を明言「高倉健さんに敬意を表して」
第28回東京国際映画祭
第28回東京国際映画祭で常に時代を切り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称える第2回“SAMURAI(サムライ)”賞を受賞し、来日したジョン・ウー監督。中国とハリウッドをまたにかけて活躍する巨匠が、高倉健さんの主演作『君よ憤怒の河を渉れ』(1976)の原作小説を再映画化する企画を始動し、年明けに日本で撮影することを明かした。
本作は、1976年に公開された高倉健主演『君よ憤怒の河を渉れ』の西村寿行による同名小説を映画化するもの。製作の経緯について、ウー監督は「高倉健さんに関する映画をずっと撮りたかった。高倉さんが亡くなられたときは本当につらかったけれど、彼に敬意を表する作品を撮りたいという思いはずっと持ち続けていたんです」と長年の思いを口にする。
しかも、「本当は『駅 STATION』(1981)を撮りたかったんですよ」と思いがけない真相も吐露。「あの映画の愛の描写に魅せられて。倍賞千恵子さん演じるヒロインはずっと(高倉さん演じる主人公に対して)変わらぬ愛を持ち続けているけど、結局は別れなければいけない。そのやるせなさがいいんです。それに男の弱い側面も描かれているところも好きでした」と熱く語った。
そうなると、気になるのは日本のどこで撮るのか? だが、それについても監督は「日本の西部や南部。大阪から九州に至る途中の小さな町などでロケをすることになります。にぎやかな都会も撮りますが、郊外の美しい景色や川、牧場でも撮影したいと思っています」と気さくにコメント。日本人の出演についても「2人の男性と女性が登場するこの作品では、主役の2人の男性を中国と日本の俳優に演じてもらいます」という。
そして最後には中国の人たちが高倉健さんに惹(ひ)かれる理由について「中国古代の武侠の人間のように、寡黙で、冷静で、言葉にはしないけれど、表情から温かい気持ちや責任感などが見てとれる。そこが彼の魅力ですね。「中国の始皇帝を暗殺しようとした荊軻(けいか)を彷彿とさせます」と興奮気味に話した。(取材・文:イソガイマサト)