チリ落盤事故の真実…主演アントニオ・バンデラスが明かす
スペイン出身の俳優アントニオ・バンデラスが、新作『ザ・サーティースリー(原題) / The 33』について語った。
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本作は、2010年チリのサンホセ鉱山で起きた落盤事故による、33名の鉱山作業員の救出劇を描いた作品。作業員が地下およそ700メートルに閉じ込められ、食料がどんどんなくなり、死の恐怖と闘う中、地上では彼らを助けるために愛する家族がどのような行動を取ったかが描かれる。アントニオは、鉱山作業員のリーダー的存在マリオ・セプルベダ役に挑戦し、テレビ映画「レモネード・マウス」のパトリシア・リゲンがメガホンを取った。
製作までに時間が掛かったことについて「出演オファーがあってから、撮影するまで1年掛かった。その間に、ニュースでは伝えられていない本作のテーマを脚本に明確に記していた。本作は『アポロ13』や『タイタニック』のように世間に結果がわかっている出来事なため、その中で何が核となるのかを確認し、最終的にその核となるのは鉱山作業員の人生そのものであることがわかったんだ」と説明した。
実在のマリオに会って「彼は、『僕はゾロ(『マスク・オブ・ゾロ』でアントニオが演じた役)ではない。ヒーローでもない。僕は人生という旅路を通して、苦悩しながら何かを得てきた。僕ら鉱山作業員は、あなた方俳優にヒーローの物語として伝えてほしくはない。なぜなら鉱山では、良いことも悪いことも起きているからだ』と言った。落盤事故に遭って、彼らには兄弟愛が芽生えた。だが、地下700メートルまでドリルで直径8センチの穴を掘られ生存確認がされてからも救出までにかなりの時間が掛かった。その間メディアではニュースが流れ、マリオのもとにはチェックが送られてきたり、自叙伝執筆の依頼もきた。それが作業員の中で彼を孤立させたりもした。彼は、そんな人間的なことを描いてほしかったんだ」と明かした。
実際の鉱山での撮影について「映画の冒頭で、作業員が乗った車が鉱山の地下をドライブするシーンがあるが、あれは実際の鉱山を使って撮影した。セットではない。コロンビアのネモコン岩塩坑道で撮影したんだ。僕らの撮影現場では女性がリーダーで、彼女らが僕ら俳優の指導をしてくれた。ただ、実際にその中に居たときは、崩れてこないか少々不安だったよ」と振り返った。
映画は、苦悩する鉱山作業員の精神状態と家族の思いが克明に描かれ、いかに奇跡の生還につながったか理解できる作品に仕上がっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)