34歳で逝去した伊藤計劃の遺作『ハーモニー』で難役に挑んだ沢城みゆき、作品から受けた衝撃明かす
人気声優の沢城みゆきが14日、TOHOシネマズ新宿で行われた映画『ハーモニー』公開記念舞台あいさつに登壇した。霧慧トァン役として参加した沢城は「履歴書で形を作れるキャラクターではない印象。ワンシーンワンシーン監督に確認しながら演じていました」と非常につかみどころがなく難しい役だったことを打ち明けた。本舞台あいさつには沢城のほか、御冷ミァハ役の上田麗奈、零下堂キアン役の洲崎綾、マイケル・アリアス監督、なかむらたかし監督も出席した。
本作は、フジテレビ系の深夜アニメ枠「ノイタミナ」による「ノイタミナムービー」として劇場アニメ化される「Project-Itoh」の第2弾。高度な医療社会に切り替わった地球を舞台に、その社会に抵抗する少女たちの姿を描いた物語。沢城は「この作品を観るには(雨模様であることは)ちょうどいい天気かもしれませんね」と作品自体が重厚な趣をかもし出していることに触れる。
さらに沢城は、出来上がった作品を観たあとの感想を「一言ではまとめられず、ずっとボンヤリしていたのを覚えています」と語ると、洲崎も「魂を持っていかれた感じ」と表現。上田も「現代でもあると思うのですが、優しさが形になってしまうと攻撃的になってしまうこともあるんだなって感じました」と作品の持つシビアな世界観に大きな衝撃を受けたようだった。
そんな声優陣の感想になかむら監督は「原作は非常に難しい作品。下手に映像化したら陳腐になるので、どうやって映像を上手く重ねていけるかを考えました」とアプローチ方法を明かすと「皮肉のきいた暗い物語ですが、実人生のなかに、ひとかけらでも何か得られるきっかけになってくれればという気持で演出しました」と思いを語っていた。
34歳で亡くなった伊藤計劃氏の遺作となるSF小説を映画化した劇場版アニメーション。上田は「伊藤先生が投げかけた問題に対して、一生かかっても答えが見つけられるか分かりませんが、新しい角度で命について考えることができました」と真摯に作品に向き合ったことを明かすと、マイケル監督も「伊藤計劃先生の素敵な原作を、ぜひ多くの人に読んでもらいたいです。そして先生にこの映画を劇場で観てもらいたかったです」としみじみと語っていた。(磯部正和)
映画『ハーモニー』は全国公開中