「妖怪ウォッチ」生みの親が驚いた映画化の道のり ファンのための劇場版-日野晃博氏インタビュー
昨年12月に公開された映画は興行収入77.8億円の大ヒットを記録し、今月には劇場版第2弾『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』の公開を控えている「妖怪ウォッチ」。同タイトルの生みの親・日野晃博氏(レベルファイブ代表取締役社長/CEO)は、「妖怪ウォッチ」の映画化は彼らにとっても驚きの展開だったと明かす。
『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』フォトギャラリー
「妖怪ウォッチ」はゲームを中心に、テレビアニメ、漫画、映画、玩具展開など多岐にわたるクロスメディアをしているタイトルの一つだ。クロスメディア展開は今ではレベルファイブが得意とする分野と称されるようになったが、その背景には日野氏の「まずは子供たちの前にタダでコンテンツをおかないといけない。いきなり5,000円もするゲームソフトを子供が買えるはずはない」という考えがあった。もちろん日野氏はクロスメディア展開されたものに対しても手を抜くことはない。自分の時間が許す限り全てに目を通しているのだという。本映画でもその姿勢は変わらず、クリエイティブプロデューサー・企画・シナリオ原案・脚本を手掛け、公開1か月を切った時点でも納得のいくまで音楽のリテイクを要請した。
「僕もアニメスタッフであり、映画スタッフであり、ゲームスタッフであるような感じです」。そう笑う日野氏だが、クロスメディア展開の第1弾「イナズマイレブン」では、アニメスタッフとの連携がままならず、自身のヒット理論とスタッフが抱いていたアニメ業界の常識がぶつかることもあったという。ゲームやアニメ、映画などがヒットし、アニメ制作現場に一体感が出てきたころに「妖怪ウォッチ」の企画がスタート。ここで通例であればある程度ヒットしてから持ち掛けられる映画化のアプローチを、アニメやゲームの発売前から東宝から受けたという。
日野氏にとっても映画化は「コンテンツ自体の格を上げる」特別なこと。異例のスピードでの劇場版の話に、日野氏も驚きつつも自分たちの作品が認められ、信頼を得られるようになったことを実感したという。結果、ゲームやアニメのヒットに続くような最高のタイミングで劇場版第1弾が公開された。
その続編となる今回の劇場版第2弾は、非日常的な冒険を描いた長編作品の前作とは打って変わり、五つの短編エピソードで構築されたオムニバス形式の作品だ。前作と異なる形式にした理由について、「テレビのファンの人たちが見たいと思っている作品を作ろう」という意識があったとのこと。テレビアニメスタッフとして、どの回が良かったなどの感想から苦情数まで、視聴者の反響を全て把握している日野氏だからこその発想だ。「観客に観たいものを観てもらう。その上で感動できたならばいいなと思っています。観たくないものを観せて、結果感動できたでしょとかもしたくない。まずは感動できるかはわからなくとも、とにかく観客が観たかったものを作りたいんです」。代表取締役として一番上に立つ日野氏だが、彼の視線は誰よりもファンに向けられていた。(編集部・井本早紀)
『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』は12月19日より全国公開