“家族”に狙いを定めるNetflix
現地時間17日、大手オンラインストリーミングサービスのNetflixがアメリカ・カルフォルニア州ロサンゼルスでテレビ批評家協会(TCA)プレスツアーを開催した。
【写真】「フルハウス」のキャストが「フラーハウス」であのセットに帰ってきた!
TCAプレスツアーとは、年に2回開催されるTCA会員と米テレビ局やNetflixやAmazonなど自社コンテンツを持つ配信サービス会社の交流の場。会社側はTCA会員に向けて新コンテンツを発表し、会員側はクリエイターや出演者たちを取材する。プレスツアーで新たな情報が発表されることも多く、米メディアからかなり重要視されているイベントだ。そのプレスツアーにNetflixは、日本を含む非会員の各国のメディアも特別にパネルを鑑賞できる枠で招待。今月配信サービスを190か国以上に拡大したばかりの同社が、その事業規模の大きさをあらためて見せつけた。
この日パネルで紹介された作品は、新シーズンが開始する人気作「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」「デアデビル」のほか、ゴールデン・グローブ賞テレビドラマ部門にノミネートされた、コロンビアの麻薬王を描く「ナルコス」など。そのほかには、暴行罪で逮捕された後DNA鑑定で無罪を獲得するも、再度投獄された男性を追ったドキュメンタリー「殺人者への道」の監督たちが登壇するパネルも開催。特に同作は、配信後に活発となった男性の釈放を望む署名活動にホワイトハウスも反応しており、彼の2度目の投獄を監督たちは“えん罪”と捉えているのかという件については、米メディアから大いに関心が寄せられていた。
上記のようにNetflixの主力作品といえば、地上波ではなくストリーミングサービスだからこそできる、マイノリティーや重たいテーマを扱った濃密なドラマのイメージが強い。だが今期のNetflixは、人気海外ドラマ「フルハウス」の新作「フラーハウス」や、アシュトン・カッチャー主演の「ザ・ランチ(原題) / The Ranch」などシチュエーションコメディードラマも新たな主力作品として打ち出した。
もともとアメリカでは、シチュエーションコメディーは人気を集めやすいジャンルだ。しかしそれだけに思えないのは、Netflixにとって今年は、ギレルモ・デル・トロの新作アニメーションシリーズ「トロール・ハンターズ(原題) / Trollhunters」や、有名玩具をモデルにした「レゴ:バイオニクル:ザ・ジャーニー・トゥ・ワン(原題) / LEGO: Bionicle: The Journey to One」など有名クリエイターや企業の協力の下、キッズコンテンツの拡大が進められている年だからか。家族全員で鑑賞できる明るい作品を、意識的にリリースしているとも読める。
会員制のNetflixはテレビ局とは異なり、瞬間的に視聴率を上げることを必要としていない。いかに会員数を保つかの勝負になる。そのため、よりユーザーが興味のあるコンテンツを発信し続けられるかということがキーとなる。今年のNetflixは“家族層”に狙いを定めつつあるようだ。(編集部・井本早紀)