秋吉久美子、森田芳光監督ってやっぱり天才だった
杉山泰一監督作『の・ようなもの のようなもの』公開を記念し、故・森田芳光監督の『の・ようなもの』(1981年公開)が1週間限定で特別上映されることとなり、23日、東京・角川シネマ新宿での舞台あいさつに、同作のヒロイン役・秋吉久美子と、共演・伊藤克信、杉山泰一監督が登壇。秋吉は35年ぶりの本作の印象や、森田監督との撮影エピソードを熱っぽく語り、場内を盛り上げた。
秋吉久美子 名作『の・ようなもの』を振り返り 森田芳光監督ってやっぱり天才だった 画像ギャラリー
あいさつで、まず秋吉は「今日は、新しい気持ちで観ることができました」と述べた後「私はただの自然体で、全然お芝居していないんだけど、伊藤くんはホントに素晴らしい演技だったと、今日改めて知りました。めちゃくちゃうまいのに、普段のお喋りで彼がハズすから、世間にすごさが伝わらない。それが残念」とストレートな印象を続ける。いきなり、ちょっと毒のある賞賛を受けた伊藤は「演技経験ゼロでスカウトされて、無我夢中でやっただけです」と照れ笑い。本作のどこかにあったようなやりとりに会場も和んだ。
2011年に他界した森田監督の劇場デビュー作『の・ようなもの』は、駆け出しの落語家・志ん魚(しんとと、伊藤)と、客として出会ったソープ嬢エリザベス(秋吉)、同門の若手噺家たち、落研部の女子高生とのふれ合いを描く青春劇。森田監督の元で長く助監督を務めた杉山監督は、35年を経て、今回『の・ようなもの』のその後を描く続編『の・ようなもの のようなもの』を、松山ケンイチ主演で完成させ、監督デビューした。
「青春の輝き、不安定さ、天真爛漫さ、残酷さ。全部が『の・ようなもの』の伊藤くんの表情にあるんです」と続けた秋吉は「これは残酷な映画。私がやったエリザベスも、涙ひとつ見せず志ん魚から去るけど、その悲しさが今日やっとわかったくらい、サラッと描く。森田監督って天才だったんですね」とコメントし「撮影時は、イチイチうるさい監督だなって思ってたんです。そしたら監督に呼ばれて『秋吉さん、もっと僕を監督として見てください。そうしないと(共演の)女子高生たちが、秋吉さんと同じ目で僕を見るから。僕はもっと彼女らにモテていいはずだ』って言うんです」と、森田監督の楽しいエピソードも紹介。杉山監督も「当時の撮影は、昨日のことのように憶えています。筋がよくわからないのに、最後にジーンときて、自分の価値観をガラッと変えてくれた作品だった」と、森田監督との仕事を振り返った。
『の・ようなもの のようなもの』は、落語修行中の志ん田(しんでん、松山)が、かつて一門にいて消息のわからない志ん魚を捜すよう師匠に頼まれ、奔走する物語。松山や北川景子ら、森田監督作の歴代キャストやスタッフが大集結。伊藤ほか、尾藤イサオ、でんでんも前作と同じ役柄で登場する。(取材/岸田智)
映画『の・ようなもの』は東京・角川シネマ新宿にて1月29日まで上映
映画『の・ようなもの のようなもの』は全国公開中