反捕鯨『ザ・コーヴ』の反証映画に込めた日本人監督の思い
アメリカ人が日本のイルカ漁を独自の視点で捉え、さまざまな物議を醸した映画『ザ・コーヴ』。その反証映画として製作されたドキュメンタリー『ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~』が30日、都内で公開初日を迎え、八木景子監督と『ザ・コーヴ』の日本公開に踏み切った配給会社アンプラグドの加藤武史氏が登壇し、熱いトークを交わした。
本作は、捕鯨問題を追究するうちに、和歌山県太地町で『ザ・コーヴ』を観る機会を得た八木監督が、一方的なイルカ漁批判に終始する内容に疑問を抱き、同作への反証を試みるドキュメンタリー。『ザ・コーヴ』のルイ・シホヨス監督や出演者のリック・オバリー、イルカ漁を行う太地町の人々にも精力的に取材を敢行している。
『ザ・コーヴ』公開当時、さまざまなバッシングや抗議行動を受けた加藤氏は、同作が第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したことが大きかったと振り返る。「これをきっかけに、『観るべきじゃない!』というテレビのコメンテーターが急に多くなり、流れが変わってしまった。本当はもっと冷静に『捕鯨やイルカ漁をみんなで考えよう』というところに持っていきたかったのですが、結局、感情論になってしまって。観ていない人にまでテロリスト呼ばわりされてしまった」。
八木監督も「当時はトレーラー(予告編)を観ただけで不快な感じがして観る気がしなかった」と本音を告白。「最終的に太地町で『ザ・コーヴ』を観る機会を得たんですが、この映画に関しては、かなり演出や事実でないことが盛り込んであることがわかった」と語気を強める。ただ、日本人の事なかれ主義にも原因があると警鐘を鳴らす。「海外へ行くと、日本人は何を考えているのかわからないとバカにされることがある。日本人も意見があるなら、我慢ぜずに論じようよ」と議論の大切さをアピールした。
また、クジラとイルカに世界が敏感なことについて八木監督は、「(反捕鯨団体シーシェパードの設立者)ポール・ワトソンは、『クジラやイルカは寄付金が集まりやすいのでシンボルとして使っている』と言っていた。そこからプロパガンダとして映像がどんどん流れていって、クジラやイルカが死んじゃうと世界の環境も死ぬ、みたいなメッセージが植え付けられたのも大きいのでは?」と分析していた。(取材:坂田正樹)
映画『ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~』は新宿 K's cinema で全国順次公開中